先週は、「Think Globally, Act Locally(地球規模で考え、足元から小さく行動する)」という言葉を軸に、ソーシャル・デザインの根本的な考え方についてお伝えした。
今週は、社会をデザインしていくために、「どのようなステップで何から取り組めばいいのか?」について、一緒に考えていきたい。
「自分ごと」をどんどん広げていくことで、ソーシャル・デザインにつながるステップを見ていこう。
有名な「マズローの5大欲求」は聞いたことがあるだろう。
まず、人間の3大欲(食欲・睡眠欲・性欲)などの「①生理的欲求」から始まり、「②安全欲求(生命の安全・身の安全)」「③社会的欲求(コミュニティへの帰属欲求含む)」「④承認欲求(人としての尊厳欲求含む)」ときて、最後は「⑤自己実現欲求」に行き着くというもの。
そして実は、心理学者マズローはこう記述している。
「⑤自己実現欲求——自己実現を目指す人は〝全ての人間の中で最も個性的で、最も利他的、社会的、人を愛する性質をもつ〟という。
Camperなら、もうわかるだろう。
人は、「個」の望みを本気で追求していると——自然と、「個(1人)」だけでは幸せになれない——他者や社会のためという「強い望み」に行き着くということ。
さらに、仏教哲学の創始者である、お釈迦様も同じことを説いている。
ここに、「マイグッドからはじまるソーシャルグッド」のヒントがあると思っている。
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【今週の先出しハイライト】
・自分の心と体を整える「ライフスタイル・インフラ」なくして、社会を変える持続的エネルギーは生まれない。
・本当に大切にすべき家族とは、血縁ではなく愛と理解に満ちた最小のコミュニティとしてのパートナーと子ども。
・お金の使い方は命の使い方──消費という日常の行為こそが、もっとも身近な社会貢献である。
・仕事とは志を持って誰かの役に立つこと──搾取と破壊に加担する仕事から距離を取り、「志事」に変えよう。
・「自分ごと」としての社会課題にアーティスト性で向き合うことが、持続可能で幸福なライフテーマを育てる鍵となる。
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【ソーシャル・デザインをはじめるための5つのステップ】
1. 自分自身の「ライフスタイル・インフラ」を整える
「社会」という外側の大きな世界を変えようとする前に、まずはあなたの全ての土台ともいえる「ライフスタイル・インフラ」を見つめ直すことからはじめよう。
つまり、「心と体」を整えるところからはじめるということ。
そのために、食事・睡眠・運動といった生活習慣のライフスタイル・インフラを構築しよう。
自分という「個」を徹底的に本気で大切にすることは、家族や仲間、周りのコミュニティや社会、そして地球に、貢献するための第一歩。
「これができていない人は、何をやっても続かない」
「ちゃんとに食べず、ちゃんと休まず、ちゃんと眠らず、ちゃんと運動せず、ちゃんと遊んでない人(=つまり自分を大切にできていない人)に、他者や社会の役に立てるわけがない」
と、ぼくはいつも断言する。
耳が痛い人もいるかもしれないが、これはぼくが「絶対」と断言できる数少ないことの一つ。
50年以上、自分の心の声と真剣に向き合いながら、しっかりとしたライフスタイル・インフラを構築し続けて辿り着いたのが、上記の「ずっと聞かされてきた母の口癖=5つの教え」が正しいという結論だった。
仲間であるCamperのみんなは、ぜひ、ぼくが最も大切にしているこの人生哲学を信じてほしい。
Campは、「この哲学をいろんな形で伝えるためにつくった」と言っても過言ではない。
もし、あなたのライフスタイル・インフラが整っていなければ、「肉体と頭脳」両方のパフォーマンスは年々低下し続ける。体力も集中力も創造力も下がり、持続性は完全になくなる。
そんな状態で仕事や暮らしでなにかを成し遂げたり、社会問題や誰かのためにコミットし続けたりすることができるだろうか?
残念ながら、無理。
どんなに頑張ってもパフォーマンスが上がらず、結局はあまり貢献できずに終わることになるだろう。
だからこそ、まず自分自身を大切にして、ライフスタイル・インフラをしっかり整えることが重要なのだ。
逆説的な言い方をすると、ライフスタイル・インフラが整うことで、あなたの体、あなたの脳、あなたが暮らし、働く空間からノイズが減り、思考も判断もクリアになるということ。
結果、自分が人生をかけて取り組みたいことや、所属するコミュニティや社会が抱える問題に気付ける。心の余裕も生まれ、自らアクションを起こせるようにもなるはずだ。
< Photo by Toshitake SUZUKI >
2. 家族や仲間を大切にする
「自分」の次に大切にすべきは、家族や仲間。
とはいえ(繰り返すが!)自分を犠牲にしたり、義務感をベースにしてはいけない。
「私はこんなに尽くしているのに」といった気持ちで家族や仲間を大切にすると、相手にもそれを強要しがちだ。
この考え方では、決して長続きしない。そして、それを受け取る相手も苦しくなる。
さらに言うならば、こういった思考はポジティブなものを生み出さないし、人の心も動かせない。
結果として、ソーシャル・デザインにつながることはない。
「自分がこんなにがんばっていることをわかってほしい」
という気持ちが湧いてきたら即立ち止まり、自分の内面を見つめ、少しでもいいので考え方を変えてみよう。
つまり、マインドフルになってみるのだ。
まずは自分——そして家族や仲間——あなたの「いま目の前にいる、大切な人」を大事にすれば、それが社会を大切にすることにつながる。
自分の「身近な環境」が平和であれば、心は平和になる。
結果、さらに外にいる人たちに対しても、思いやりを持って対応できるようなるのだ。
ちなみに、ぼくの「大切な人」の順番は、
「①自ら選んだパートナー」「②自分の責任で育てている子ども」。
そして、あなたを心から愛し(A)、あなたを認めて理解しようと努めてくれる(B)、「③親や親族や仲間」。
たとえ親や血縁者でも、(A)と(B)のどちらかが欠けている親や親族は、極論を言えば「本当の家族でない」とぼくは思っている。