Movilist 四角大輔インタビュー
四角さん、移住する前に15回も下見したってホント?【前編】
「自分の言葉で表現したい」真の自由を手にして得た新たな衝動【中編】
「旅も登山も人生も、ミニマムに、創造的に」四角が実践する21...
ようやく手にした本当の自由。
そして湧いてきた、新たな衝動
山崎 それだけ長い間イメージしてて、実際に行かれてみて、ご自分の中で意外な変化ってありましたか?
四角 一番大きかったのは、ニュージーランドの湖に暮らすという理想のライフスタイルが本当に実現したことで、より自由になれたこと。ある意味、「湖のほとりに暮らしたい」っていう強烈な想いっていうのは、1つの「縛り」にもなりますよね。
そんな「心の真実の声」という、魂レベルの欲望を満たす〝完全なる幸せな状態〟を手にした時に、その「縛り」から解放されたんです。
それまでは「どうやったら実現できるのか?」って、そのことだけが人生のトッププライオリティで。その為に15年以上かけて永住権や英語、お金など、気の遠くなるような準備をしてきたわけです。いよいよその理想の生活を手にしたら、その「一番のプライオリティのためにがんばる」という縛りから解き放たれた。
山崎 なるほど。
四角 まだ上手く言葉で説明できないんですけど、今の質問「一番の変化とは?」への答えとしては、「さらなる自由にを手に入れた」ということになるかと。
長期間この湖を離れる際は、「もっとここにいたい」という気持ちになるんです。でも東京で働いたり、日本中、いや世界中いろんな場所で、精神的に自由自在に生きられるのは、「いざとなったらあそこに帰ればいい」という、最高の心のホームがあるからなんです。
そして、新しいことに挑戦したくなってきたんです。それは、ちょっとした「気の迷い」ではなくて、「湖に住みたい」って思ったときと同じぐらい強い、心の真ん中から発せられる
「本物の衝動」として出てきてるんです。
《クリエイティヴワークの多くの時間を費やす湖畔の自宅テラス。自身がもっともクリエイティヴになれる場所。インターネットにアクセスできることで、こんな大自然の中でも働くことが可能》
山崎 その自由な感覚の中で、何をしたいっていうどんな欲望が出てきましたか?
四角 「自分の言葉で表現したい」という衝動です。ぼくはもともと言葉のプロではありません。でも、言葉って誰でも使えるじゃないですか? ぼくは、歌ったり踊ったりはできないですけど、言葉を使うことはできると。
言葉は〝もっともリアルに〟伝えたいことを表現できるツールだと思うんです。それを使って、自分を支えてきた信念や思考法、感動的な体験や人生を豊かにするハウツーをシェアしたい。それが一番やりたいことですね。
トークライヴや大学講義、連載や単発の寄稿文、インタヴューやソーシャルメディア、そしてこの「4dsk.co/四角大輔のすべて」という自分のメディアでメッセージを発信したり。幸運なことに今の時代、表現のためのツールは無数にあります。
山崎 その通りですね。
四角 ぼく、書くのが遅いので、自著はまだ2冊しか出せてないんですが、多数の出版社さんから単行本のオファーをいただいて、10名近い編集者さんが待ってくださっている状態なんですが(汗)。自分の本を書いている時が、今はもっともクリエイティヴになれますね。
あと、日本の若い世代をインキュヴェート(育て、サポート)したくて。これは元々、ぼくがアーティストをプロデュースしたのと同じ発想から生まれてます。ぼくが手がけてたのは、10〜20代のアーティストがほとんどだった。
それもあって、そういう世代と対等に話せることが、その時から自然にできてた。相手が若い起業家やクリエイター、大学生や高校生でも、ぼくのスタンスは全く変わらず対等でいれるんです。
文章を書いてる時や大自然の中にいる時と同じくらい、彼らと一緒に何か創ったり、コミュニケーションを取ってる時が圧倒的に楽しいですね。
山崎 いいですね。
四角 よく「そんな、お金にならないことやってるよね」とか言われるんですけど、どっちかっていうと、実際は、彼らからぼくが、いろんなことを教えてもらってるんです。とにかく楽しいんですよ。
今の10代、20代の子達って、ぼくらが若い頃に比べて、驚くほどクリエイティヴなんですよ。それと同時にエシカル(道徳的)でもあるんです。そこにぼくは、明るい未来への可能性をものすごく感じるんです。
その反面、彼らはものすごく繊細で打たれ弱いんですよね。「なんとかしたいな」と。彼らの感性と才能を守り抜いて、その人らしく生きられる 子を、1人でも多く増やしたいなって。
「人は誰でもアーティスト」ってぼくはよく言うんです。人の中にあるアーティスト性を120%に盛るわけでもなく、80%で終わらせることもなく、なるべく100%に近づけたいんです。つまり「その人らしさを、なるべくそのまま守り抜き、表現できるように」ということです。
そうやって、アーティスト性を取り戻した子を1人でも多く世の中に出すことが、日本を、世界を良くするために、ぼくができることだと思ってるんです。
自分自身が楽しみながらやりがいのあることをやってるうちに、世の中を変えるようなウェブサービスやアート、NPOを作っちゃうような、そんなチャレンジをしてる子が、いまボコボコ出てきてて。
そういうのって、同世代の人間やそれより下の後輩たちは勇気づけられるし、単純にぼくら大人もメチャクチャ引っ張られるんですよ。
山崎 なるほど。今は、四角さんって、東京とニュージーランドはどういう間隔で行き来されているんですか?
四角 多い年で5から6往復、少ない年で3、4往復かな。最短だと滞在4日間っていうのもあって。最長記録は6カ月弱ですね。でも一度の滞在は、平均して1~2カ月って感じかな。最近は、7ヶ月ほどニュージーランドにいて、3ヶ月ほどが日本、残りの2ヶ月はいろんな国にいる感じですね。
キャリア・デザインはライフスタイル・デザインの一項目でしかない
山崎 日本に滞在されてる時は、主にどんな活動をされているんですか?
四角 ぼくが仕事を受ける条件は「場所の制約を受けない」ということ。この生活を始めたばかりの頃、すでにデバイスやテクノロジーは、移動しながら仕事することを可能にしていました。
でもなかなか、クライアントや仕事仲間たちの頭がそれについてきてくれなくて。でも正直、当時のぼく自身も「やっとイメージできるようになった」くらいでしたから。まあ、しょうがないなと(笑)。
山崎 これまではフェイス・トゥ・フェイスの仕事をされてきたわけですからね。
四角 そうですね。アーティストをプロデュースするというのは彼らに寄り添うことで成り立つ仕事なので。それで、「場所の制約を受けないこと」という仕事の条件を決めたんですけど、それって、かなり大きな制約だから、どこまでやれるか分からなかった。
ダメだったら、当初の予定通りニュージーランドの湖のほとりに完全に引っ込んで、ヒッピーのように森の生活を送ろう、と覚悟はしていました。
実際、向こうにいる時には、ほぼ自給自足の生活をしてるんです。でも、場所の制約を受けない仕事っていうのが意外にあって(笑)。結果、こうやって日本に来たりいろんな国に行ったりする生活は、もう6年も続いてます。
《日本だけでなくニュージーランドでもロケ撮影を行う。これは8日間の冒険の記事。雑誌「WILDERNESS」2015年秋号に13ページに渡り掲載》
山崎 日本に戻ってこられる主な理由は何ですか?
四角 ただ、その中で場所の制約を受けざるを得ない仕事が2つあって。1つはトークライヴや大学講義。2度ほど、「スカイプ」経由でやったことがあるんですけど、会場の空気はまったく伝わってこないし、ぼくの熱意も向こうにも伝わらなくて。もうやらないことに(笑)。
あとは登山やアウトドア雑誌とか、フライフィッシング専門誌のロケ撮影です。日本のフィールドでやる場合は、ぼくの体はその場所にないと成立しないので。「人前でしゃべる」と「アウトドア撮影」という2つ仕事の為に、帰国するんです。これら以外は全部、場所の制約を受けない仕事だけになっています。
山崎 今、〈上智大学〉で非常勤講師をなされてるじゃないですか。教えることっていうのは、どうですか?
四角 大学に関しては、なるべく前期はこっちにいた方がよくて、毎年春から夏は東京がベースになっています。あと他大学は、学生から呼ばれたら行くってスタンスにしているから気楽です。
一昨年は、半年間で30校ぐらいに呼ばれて「全国大学講義・弾丸ツアー」みたいになったりして(笑)。でも教えるって感じじゃないんですよね。ぼくが伝えたいメッセージを伝達しに行ってるだけっていう感じです(笑)。
山崎 どういったテーマで教えてらっしゃるんですか?
四角 もともと〈上智大学〉には複数の社会人講師が参加する、伝統のある枠があって。今はぼくと、ベストセラー『伝え方が9割』著者で、コピーライターの佐々木圭一や、著名な社会起業家マエキタミヤコさん、大手企業で働く卒業生などがいる。圭一とは15年来の親友で、この講義の古株。他はかなり入れ換わってますね。
この授業は割とゆるくて、毎週行かなくてもいいんです。自分が絶対に行かなきゃいけないタイミングはあるんですけど、それ以外はワークショップをサポートしたり、アドバイスしたり。
でも、学生たちの人生相談を受けまくってる、というのが一番の業務かもですね(笑)。あと、この期間はちょうど、アウトドアや釣り雑誌のロケをやるには一番良いシーズンだし、講演オファーも多い時期でもあるんですよね。
山崎 講座の内容は考え方とか発想についてですか?
四角 そうですね。「21世紀を生き抜くための方法提案」って言えばいいでしょうか。ぼくがここ数年話しているのは、「ライフスタイル(人生)デザイン」というテーマ。
他にもいくつかのコンテンツがあって、時々変えてはいるんですけど。キャリアデザインはライフスタイル・デザインの一項目でしかないんですね。大事なのは人生をかけて成し遂げたいライフワークや、自分らしさ、あるいはすべてのインフラである体のマネジメントとか。
日本って、キャリアデザインが最優先で、家族や健康や、自分の夢よりもこれが大切と教えられてきたところがあるじゃないですか。「でも決してそうじゃないよ」という話を主に今はしています。つまり、考え方、思考法、発想法を伝えることに情熱をかけている、と言っていいでしょうね。
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