彼がニュージーランドで営む自給自足ライフや、機内持ち込みの小さなバックパック1つで世界中を旅するミニマルジャーニーのルーツは、バックパッキング登山にあった。
ここでは、四角大輔著『バックパッキング登山入門〜自由に山を旅する61の流儀』掲載の
〈method 006|山に行けるのは週末だけじゃない〉全文公開しつつ
彼が独自で開発したホリデー術から「マイ4連休の取り方」をお届けしたい。
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〈どんなに忙しくても4連休を取るべき理由〉
ニュージーランドに移住するまでの15年間、ぼくはレコード会社に勤務し、プロデューサー業に従事していた。
仕事は24時間体制で苛烈を極めたが、会社の誰よりも自然の中へ出かけていたことを今でも思い出す。
ビジネスパーソンのスケジュールは、まず他者とのアポで埋まっていく。打ち合わせや会議など、気づけばあっという間に1ヶ月先まで予定はビッシリだ。
多くの人はそれが日常となり、山や自然から足が遠のいてしまう。
当時、ぼくが優先していたのは、他者とのアポよりも「自分とのアポ」だった。
日本の山は、山域ごとにいい時期が存在するのは、みなさんご存じの通り。
そこで、 オフシーズンのうちに1年先までの登りたい山を選び、それぞれのベストシーズンをブッキングするのだ。
同時に、1年先までの仕事の流れもカレンダーに入れる。どんな職場にも、繁忙期と仕事が減って週休2日を確実に取れる時期とがある。
その山と仕事の年間スケジュールを俯瞰視すると、休みやすい時期と山のベストシーズンが重なる「ちょうどいい週末」がいくつか出てくる。それらの週末は、あなたの人生を変える山旅をもたらしてくれる可能性を秘めている。
次に、その週末の前後に、有給や代休を使って金曜と月曜を足し、計4日間をキープ。カレンダーに 「どこどこ山行3泊4日」と書き込み、他の予定をブロックしてしまうのだ。
こうやって1年先まで自分とのアポを取ってみると、4日間もブロックできるタイミングなんて、年にそうないことがわかる。それを自覚できた瞬間、この宝を死ぬ気で守ろう、という強い意思が生まれるのだ。
このマイ年間カレンダーが完成した日から、あなたの本当の闘いが始まる。
日々、どんなに重要な仕事が入りそうになっても、 「すみません、そこは前々から決まっている別件がありまして」という言葉で逃げ切るのだ。
強い表情、静かなる闘志をもって相手に伝えれば、大抵の場合、彼らは別のスケジュールを提案してくれるものだ。
この、「前々からの別件」という言葉はとても便利な言葉だ。決して「そこはテントを担いで穂高連峰を......」なんて言えないし、「仕事が......」は嘘になる。「別件」は魔法の言葉なのである。
しかし、実際に4日間も休みを確保するのは困難だ。日本において仕事の圧力はなににも増して強大である。気づけば、土曜、そして日曜も出勤、という事態になりかねない。
この恐怖の全滅を避けるために、「3泊4日ブロック思考」が必要なのだ。
理想は4日、無理ならなんとしても「週末+1日」の計3日間を死守しよう。
1泊2日だと両日とも移動日となってしまうが、2泊3日だと中日には24時間山中で過ごすという、極上の1日を手に入れることができるし、行ける山域のバリエーションが一気に増える。
このわずか1日の違いを舐めてはいけない。天と地ほどの差があることは説明するまでもない。
しかし、最終的に休めるのが週末の2日間だけに......となりがちなのが社会人の悲しい実情。
だが、ここでも「3泊4日ブロック思考」が役に立つのだ。
前後の金曜と月曜をブロックする努力をした結果、金曜は定時に仕事を終えて、その日のうちに出発できるかもしれない。もしくは、日曜夜は現地に泊まり、月曜は午前半休を取って午後に仕事場へ、なんてことも可能になるからだ。
この「プチ2泊3日方式」は「単なる週末1泊2日」では避けられない渋滞や混雑をかわせるので、心の余裕を創出してくれる。
だが、この戦略をもってしても1日しか休めないこともある。
それでも絶対に山へ行くべきだ。
体の疲れをふっ飛ばすのは、いつでも大自然のエネルギーなのだから。
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