今月のメソッド&ワークのテーマは〈チーム・デザイン 〉
ぼくは、このテーマに関するノウハウや知識を本などから得たわけではない。

次の経験から経験的に身につけてきたものである。
①究極のチームスポーツと言われる野球に没頭していた小学校から大学
②強烈な個性が集まるプロデュースチームの司令塔を10年にわたって経験したレコード会社時代
③移住後に「ゆるやかなチーム制」を自分なりに実験しながら導入したフリーランス時代

小学校低学年ではイジメられ、新入社員から数年は(全く空気を読めないため)先輩たちから叩かれまくったぼく💦
しかし、そんな状況にいても常に〝チーム・デザイン〟を自分なりに学んできた

新入社員時代、組織の末端にいながら、「いいチーム」「そうじゃないチーム」の違いを感じ取っては、それをメモしていたことを思い出す。そして、「そうじゃないチーム」からは決してヒットが出ないことを知る。つまりヒット率0割。
(ただし「いいチーム」だとしてもヒット率は2〜3割)

レコード会社でプロデューサーとして独り立ちしてからは、メモをすべて見返して自己分析した結果、チームにフラット制を導入。

ぼく自身がチームのトップに君臨するトップダウン方式ではなく、「チームとしての総合力」を引き上げることに時間と労力を費やした。
「いいチーム」のうち、持続的なヒットを生み出すチームの多くが、そういう体制だったからだ。

あの頃に経験できたヒットの数々。
それは、ぼく個人の力ではなく、チーム力の賜物だったと断言できる。


今月は、ぼくがさまざまな体験を通して培ったスキルを余すことなくお伝えしていく。


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<2019年に作家業に専任してからも引き続き、チームをマネジメントするスキルは活きている>





【ひらめきを作品に昇華する】


まずは、チーム・デザイン導入の思考トレーニングとして、身のまわりのモノやサービスについて考えてみよう。
それらが、どんなプロセスを経てあなたの手元に届けられるか考えたことはあるだろうか。

宅配された小さなガジェットを例にしよう。


これを手にするまでの過程であなたが対面する人は、それを宅配してくれた人1人だけかもしれないが、その人の先には(大袈裟ではなく)無数の人たちの労力と時間、想いと創造性が投入されてきた。


つまりそれは、〝(大きな)チームの力〟によって創られ、あなたの手元に届けられているということ。

「チーム」は、世の中にあるあらゆるものを支え、生み出し、届ける力を持っている。

(ましてや)大きなビジョンや革新的なプロダクト、人を感動させる音楽や映画は、どれも「優れたチーム」がなければ存在しない(個人競技のプロスポーツや作家業でも、その陰には必ず優秀なチームが存在する)。

どんなイノベーションも、雑務も、モノも、書類仕事も、サービスも、家事も、料理も、すべてが表現(=アート)であり人が生み出すものはすべて「作品」
ぼくはそう思っている。

ぼく独自の「作品論」は、先月の〈ワークスタイル・デザイン 〉でも触れてきた。

「作品は創って終わりではない。誰かに届けることで初めて本当の作品となる」
ぼくがずっと信じて大切にしている哲学。
レコード会社でのプロデューサー時代では、アーティストにこの話をいつも伝えていた。
(『超ミニマル主義』と『超ミニマル・ライフ』では自ら実践すべくプロモーションで全国行脚し、これが正しいことを改めて体感した)


すべての音楽のクリエイティブは、「ひとりの音楽家」から始まる。
「アーティストが自分の部屋で、ひとりで歌うこと(奏でること)」
ここからすべてが始まるのだ。

しかし、その曲を聴いてくれる人がいなければ、その曲は「存在しなかった」と言ってもいい(自著『人生やらなくていいリスト』では、完全分業制のレコード会社の仕事について触れているので、ぜひ「チームデザイン」の視点で読み直してみてほしい😉)。


ちなみに、アーティストのありのままの魅力を、より多くの人に伝えるためには、大きく3つの領域がある。

①アーティスト活動と作品の方向性を決める「ブランディング」
彼らの魅力を具体的な言葉に落とし込み、すべての活動と作品づくりの軸となる「数年は変えることのない指針=クレド」を決める。それを基に「ブランドイメージ」を的確に表現し、正しく伝えるための「長期戦略」を立てる(最低2~3年、時に5~10年スパンで)。

②音楽作品を創る「コンテンツ」
アーティストが産み落とした楽曲を、ぼくが責任者となって編成する「音楽クリエイティブチーム」が製作。さまざまな楽器を奏でるプロのミュージシャンがレコーディングに参加し、サウンドプロデューサー、アレンジャー、サウンドエンジニアによって音楽が完成する。


③ビジュアルを創る「クリエイティブ」
ぼくが編成する「ビジュアルクリエイティブチーム」がアーティストのヘアメイクとスタイリングを仕上げ、より多くの人にアプローチできるジャケットやミュージックビデオを製作する(音楽は目に見えないので、ビジュアル化はとても重要なのだ)。


そして、「音楽コンテンツ」「ビジュアル」という両領域のクリエイティブチームを統括し、メンバー全員が「創造性」を最大限に発揮できる環境を整える。
さらに、プロジェクトの中心にいるアーティストの哲学や想いをベースに、ぼくが言語化した「チームのクレド」に則って制作を進行し、作品のクオリティを維持すべく統括する。
(「環境づくり」「クオリティコントロール」「制作進行」の3つこそが、ぼくに課された統括プロデュースにおける最も重要な仕事だった)

アーティストと作品を知らない人に伝える「マーケティング」
「構築したブランドイメージと創り上げた作品を、届けるべき人に届けるための短期的な戦術」を考える(半年から1年スパン)。
メディア露出」「タイアップ」「PR」「広告」「販売促進/営業」といった重要な各部署/各チームにブレイクダウンして、社内外のスタッフと連携を取りながら1つひとつ遂行していく。