9月は、理想の空間&環境インフラの設計術〈スペース・デザイン〉を解説してきた。

今月は〈ボディ&マインド・デザイン〉。
生きるため、働くための身体と心のメンテナンスがテーマだ。

大好きなこと、本当にやりたいこと、そしてライフテーマをやり遂げるには、高い集中力とパフォーマンスを維持し続けなければならない。

その根幹となるのは「健康な身体と心」。
言うなれば、これこそが人生の最重要インフラ。

今月は段階的に「身体と心」という人生の最重要インフラを整えていこう。

第1週:自分をとことん大切にする → 身体と心を支える生活習慣を見直す

第2週:食べるものを選ぶ → 毎日の食事を見直し、自分に合った食生活をつくる

第3週:しっかり眠る → 眠りと休息を整え、身体と心を回復させる

第4週:心地よく動く → 自分に合った運動を見つけ、無理なく続ける

この1ヶ月を通して、自分の身体と心に目を向けながら、「食べる・眠る・動く」を自分に合った形で整えていこう。
そして、「自分の身体と心を大切に扱いながら生きる」感覚を身につけてほしい。

あなたが身につけた「ボディ&マインド・デザイン力(りょく)」は、年齢や環境、ライフスタイルが変わっても、自分に合わせて身体と心を整え続ける一生モノのスキルとなるだろう。


【今週の先出しハイライト】

・人生は、ゴールのない長い山旅。自分のペースで「道なき道」を心地よく歩き続ける。
・山頂だけを目指すのではなく、道中の一歩一歩を楽しみ、味わう。
・夢が叶うことは「人生のゴール」ではなく、「本番のスタートライン」。
・健康な身体と心こそ、「人生の最重要インフラ」。
・「ちゃんと食べる・動く・休む・寝る・遊ぶ」。当たり前の生活習慣が、心身を支える。
・大切なのは、瞬発的な頑張りではなく、仕組みをつくってサステナブルに「継続」すること。
・「自分をとことん大切にすること」は、決してエゴではない。そして簡単じゃない。
・「最高の自分(=アーティスト状態)」で生きることこそが、大切な人や社会への「最大の社会貢献」。


 


● 人生は、長い山旅のようなもの

人生とは、長い長い山旅(バックパッキング登山)のようなもの。

実は、人生の「ゴール」なんてものは存在せず、ずっと「山道」が続く。
その道は時に険しく、時に美しい景色を見せてくれる。

その道は一本ではなく、何本も、いや無数に存在する。
誰かが整備してくれた道ではなく、ラフロードであり、いわば「道なき道」だ。そして、人それぞれルートはまったく違う。

ある地点で瞬間的に遭遇する人
短い距離を一緒に歩くビジネスパートナー
ある一定期間をともに過ごす仲間
長い距離を一緒に歩き続けるライフパートナーや家族
——人生ではさまざまな出会いがある。

そんなずっと続く「道なき道」を、
自分のペースで、なるべく心地よく歩き続けることこそが「生きること」。 

これは、ぼくが最も大切にしている人生哲学。  
(禅問答のようだけど)

ぼくがプロデュースしたシンガーソングライター絢香が、デビュー1年目に放った言葉がわかりやすい。
デビューアルバムがいきなりミリオンセールスを記録したことを受けてのインタビュー(当時17歳!)。

インタビュアー:おめでとうございます。10代で早くも人生の夢が叶いましたね。次の夢を聞かせてください。 

絢香:ありがとうございます。私の夢は、ずっと歌い続けることです。  

絢香デビュー曲 I believe (2006年)
https://youtu.be/sJItuaykRRk  

 

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<Photo by Hiroyuki USAMI>


● 一歩一歩を楽しんで生きる

ここでは、ぼくが幼少期から続けていて、今では仕事にもなった「登山」を例に考えてみよう。

「山頂からの絶景」だけをゴールにして、「とにかく頂上にたどり着くんだ!」と道中は山頂に立つことだけを夢見ながら、ひたすら無理をする。

途中の美しい自然風景を楽しむ余裕はなく、 「つらい」「苦しい」と足下だけを見て歩き続ける。

そうして過酷な山道や岩壁をなんとかよじ登り、心身ともにヘトヘトになってようやく山頂にたどり着いた瞬間、その場にへたり込む……。

そのように苦しみながら登っても、頂上で視界が晴れているとは限らない。
厚い雲で何も見えない……。
多雨多湿の日本では、実際にそういった事態がかなりの確率で起こる。

途中の美しい景色を見逃した上に、 たどり着いた山頂からの景色も味わえないなんて、なんと悲しいことだろう。

まさに、楽しさも感動もない登山。

もっと言うと、 ギリギリの状態で登頂しても、下山という全行程の残り半分が待っている。遭難の大半は下山時に起きている。

つまり、頂上にたどり着いたとしても、 精魂を使い果たし、疲労困憊してしまっていたとするならば、その山登りは失敗。
苦労や我慢をして無意味な代償を払う、ただ登頂するだけの登山に、意味はない。

登山は、山頂からの景色だけでなく、途中のすべての情景も楽しむべきだ。
すると、ゴール(山頂)からの絶景が見えなくても、その登山自体(=行程すべて)に意味を見いだせるようになる。

これは、人生もまったく同じ。

さらに、人生は「登頂と下山」だけではない。

日本の自然形態において、 富士山のような「登って降りる」だけの「独立峰」はごくわずか。
実は、90%以上の山が「山脈」に存在している。

つまり、 1つ目の山の頂のすぐその先には別の山があり、その先にもずっと山が続くのだ。

ぼくが傾倒してきた「バックパッキング登山」とは、そういった山々が連なる山脈を何日間もかけて(時に2週間かけて約40峰を踏破することも)一気に歩き通すスタイルの登山。

1つ目の山頂(目標)に到達して山を降りても「登山の終わり」とはならず、また次の山を目指して歩き出すことになる。

つまり、「ずっと歩き続ける」ということ。
まさに人生。「ゴール」はなく、「道」はずっとずっと続いていく(まさに、先の絢香の名言)。

そこで大事なのは、「夢や目標の達成」だけでなく、到達するまでの道のりすべてを味わうこと(絢香の言葉で言うなら「歌い続けること」——歌で得られる成功も喜びだが「歌う行為そのものが幸せ」ということ)。
つまり、「目的地」までのプロセス自体を楽しみながら生きるべきなのだ。

そして何より大切なことは——
道中の一歩一歩を楽しむことができれば、必然的にあなたのモチベーションと集中力は維持され、パフォーマンスは上がるということ(まさに絢香がそうだった)。

すると、「夢や目標」の実現性も高まる(ときに早まることも!)。

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<まだ荷物が多かった若き日のころ>

● 「人生の本番」に必要なのは、健康な身体と心

ぼくがニュージーランドへの移住に費やした15年間を例にあげてみよう。

15年の長い長い道程で……
睡眠不足やジャンクフード食で、肝臓や消化器官など内臓はボロボロ。
日々の不摂生が原因で、運動時に膝を痛めてもう山は歩けない。
過度のストレスで心のバランスが崩壊し、慢性的にうつ状態になる。

仮にそんな状態でニュージーランドへ移住したとしても、 それまでの15年間に喜びはあるだろうか。
さらに、そんな状態でニュージーランド移住を果たしたとしても意味はあるのか??

大好きな畑仕事や庭仕事ができない。
山の向こうにある秘密の湖まで歩いていけない。
カヤックで波を越えて外洋に出られない。
大きくて美味しい巨大ヒラマサを釣ることができない。
近くの海でイルカと一緒に泳げない。

夢が叶っても、身体と心が整っていない限り、幸せに生きられないのだ。
つまり、「ニュージーランドでやりたかったこと=夢」が結局は叶わないことになる。

はっきり言おう。
身体や心を完全に壊してまで手にする目標や夢に、価値はない。

「夢が叶う」というのは
「人生のゴール(=終着点)」ではなく、ある意味「人生の本番のスタートライン」に立つことでもあるのだ。

ニュージーランド移住が叶って以来、ぼくはまさに「人生の本番」を生きている。
そして、想像もしていなかった作家として世界に挑戦しながら、まさに今、さらなる「人生の本番」を生きている。


レコード会社プロデューサー時代は、ぼくにとって「準備期間」に過ぎない(もちろん、音楽とアーティストとは本気で向き合った)。

夢が叶ったあとの「人生の本番」にこそ、健康な身体と心という「インフラ」が必要だ。

そして、まさに今、作家として世界に挑戦している。つまり、移住後に開始した作家活動も、16年間の湖畔の森の生活も、今まさに挑んでいる「夢」のための「準備期間」だったと言える。

だから、道中である今から、身体と心のメンテナンスをしておこう。