先週は、転職したり、好きなことを仕事にする前に、「まずは今の仕事でいいパフォーマンスを出すことの大切さ」についてお伝えした。

その最も効果的な方法は「
今の仕事を好きになる・楽しむ」こと。
なぜなら、人間を含む哺乳類の脳と体がそういう仕組みになっているからだ。

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【今週の先出しハイライト】
・メモ魔になることで、些細なタスクや、ちょっとした仕事のコツを忘れないようにする。
・長期的なタスクから考えて、優先順の上位から1つずつこなしていく。
・テクノロジーを活用して、任されたことを漏れなく一つずつ確実に実行する仕組みを構築する。
・不得意なタスクを得意な人に礼儀正しく手渡し、「自分の得意」に集中する。
・背負っている仕事量を把握し、確実に終わらせられるスケジュールを組む。
・仕事の細部にこだわることで、信用と信頼を得る。
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人類にとって「働く」の原点は、「食べるための狩猟や採集」「家事や子育てといった暮らしの営み」だった。
そして、その「働くこと」すべてを、楽しんでいたと言われている。つまり、あらゆる「働く行為」には〝喜び・楽しさ〟があり、脳内では「報酬系」と呼ばれる快楽物質が放出されていたのである。

「なぜ?」と考えるのは愚問だろう。
「食べるための狩猟採集」と「暮らしの営み」のすべてが、「食欲や排泄欲」「睡眠欲や性欲」といった
「生存本能=快適に生きるため・種を残すための欲求」と同じくらい〝楽しくて気持ちいい〟はずだから。

人類250万年(*1)という長大な歴史の中で、生物としての根源的な欲求を満たすべく生きる、「脳の報酬系」という生命プログラムがDNAにインストールされたのだろう。

詳しくは後述するが、自給自足ライフを送り、家事と子育てにフルコミットする——ぼくの個人的な直感として、この考察は正しいと断言できる✌️

ちなみに、現在の野生動物たち——悲しいことに猛スピードで様々な種が絶滅しているが——も当然、同じ生命原理(生命プログラム)に従って生きていることは言うまでもない。

動物のドキュメンタリーで観たことがあるだろう。
動物の子どもたちは、遊びを通して狩りを覚える。うちの庭の湖に暮らす水鳥たちは毎年子を産むが、その子たちが水草や小魚を食べる方法を最初に覚えるのは、
「大好きな親が楽しそうにやってることを真似したい」と思うから。

ちなみに、人間や動物の脳には「ミラーニューロン」という機能があり——特に赤子や幼児期に活発に働くのだが——
親や周りの大人がやってることの「真似をすることが楽しい!」という働きをする

先の水鳥の子たちが、潜っては水草や小魚をくわえて浮上している姿を観察していると、キャッキャッと鳴きながら歓喜していることがよくわかる。「食べるため」ではなく「おもしろい!」と思って行っていることは説明不要だろう。

そしてこのことは、我が子モンキチ(今月で生後3年9ヵ月!)を見ていてもそのことはよくわかる。ぼくの動作を真似しているときに、楽しそうなこと楽しそうなこと(今や、言葉を真似るの至高の喜びのようで、どんどん覚えていく😆)

しかし、人類は約1万年前に「農耕」を発明した後、定住して農業労働に従事し始める。遂に安定と安心を得たからと思いきや……朝から晩まで、子供から老人までがずっと畑仕事に縛られるようになる。

「食料を確実に確保できる」という安心感を得る代わりに「楽しかった狩猟採集」をやめてしまったのだ。
これが「楽しかった仕事」が「単なる労働=労役」になった最初の一歩。

これは、ぼくがニュージーランドの湖畔の森で、「狩猟採集×農業」のハイブリッド自給自足ライフを12年送ってきたぼくはよく理解できる。

魚釣りという狩り、潮干狩りや森での採集は「楽しくて楽しくていまだに100%遊び✌️」だが、畑と果樹園の管理は——もちろんいまだに大好きだが——ときどき「しんどいな」と思うときがあるからだ。

その後、どんどん「働くこと」が喜びに繋がらなくなり、200年前の産業革命を経てからは、「労働・労役」どころか「
苦役・苦痛」になってしまった。

ぼくは、
人生をかけて「働くことは本来楽しいはずだ」という原点を伝えたいと思い、執筆を続けている。その集大成が『超ミニマル主義』と『超ミニマル・ライフ』であり、ここ〈LifestyleDesign.Camp〉ではその想いを8年半にわたり全力で伝えてきた。

だから、今月の<ワークスタイル・デザイン>は、ぼくの人生デザインにおける根幹となるメソッドでもあるのだ。

(*1) ユヴァル・ノア・ハラリは『サピエンス全史』において、人類の歴史を約250万年と位置づけている。この根拠は、アウストラロピテクスから進化した初期の人類が約250万年前に出現したことに基づいている

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さて、話を現代に戻そう。

今の所属先や職場で「好きだと思えること」や「やってみたいこと」を任せてもらえるようになるためにはどんなことが必要だろうか。

1. どの業界や職種でも通用するベーシックスキルを身につけること
2. 仕事に対する考え方、取り組み方をポジティブに変えること
この2つが求められる。

ベーシックスキルとは「基本的なビジネスマナー」「雑務を確実かつ最速で処理する技術」「確実なスケジュール&タスク管理」「口頭と文面でのコミュニケーション能力」「効率的なタスク進行」といったもの。 

逆の言い方をすると……

「まともなビジネスマナーなし、基本的な業務スキルもなし、しかもネガティブ思考で仕事をしている人」に、大事な仕事を任せたいと思うだろうか?
ぼくだったら目も合わせたくない(笑)

まずやるべきことは、
狭い業界や社内でしか通用しない無意味なジョーシキではなく、どこでも通用し、時代にも左右されない「美しきベーシックスキル」を身につけること。

長い歴史をもつ日本人独特の美意識をベースとした、気配りマナーや控えめな礼儀正しさは、世界中で通用するどころか今や賞賛される。
(その昔、アメリカの価値観が世界を席巻していた時代1980〜1990年代は、控えめな日本人の態度は否定されていたが今や違うのだ)

この事実は、高校時代にアメリカに1年留学し、その後常に海外との接点を持ち続け、70ヶ国近くを訪れ、ニュージーランドに15年暮らすぼくが保証する。
特に、欧州とニュージーランドのミレニアル世代とZ世代は、日本人の「静かさ」や「繊細さ」を本気でリスペクトしてくれる。最近では、40〜50代でもそういう人たちが増えている(残念ながら北米とオーストラリアでは、まだこういった人たちは少ない感じがする)。

「ベーシックスキル」を会得し、実行できて初めて、上司や周りの人、会社、そして社会はあなたを信頼するようになる

結果、
より良い仕事、やりがいのある仕事を任せてくれるようになり、あなた自身をより高いレベルへ引き上げてくれるのだ。


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● 自分らしい仕事をつかむ「前向きな姿勢と誠意」

ぼくはレコード会社時代に、音楽ビジネスの基礎の基礎であるレコード店営業を入社から2年間、みっちり丁寧にやった。

次に
地道さと粘り強さが求められる宣伝の仕事「メディアプロモーター」を3年ほどやりながら……、〝何でも屋&ウルトラ雑用係〟ともいえる「アシスタントプロデューサー」を務め、「ベーシックスキル」を鍛え抜いた。

このベーシックスキルを身につける期間を別の言葉で表現するならば、ズバリ「見習い期間」。

どこかに勤めながら、どの業界でも通用する「ベーシックスキル」を体得するのは効率的だ。
その職場を「お金をいただきながら、座学じゃなく専門スキルを実践できるビジネススクール」と考えよう。
この重要な「見習い期間」を軽視する者、適当に過ごす者は、その後ずっと何十年と苦労することになる