『人生やらなくていいリスト』
四角大輔著  

頑張らなくていいことに「命=時間」を費やしてる君へ。
現代社会を生き抜くためのミニマム仕事術。  

「To Do」を手放し、仕事の効率を高める。
「心の荷」を捨て、理想の生き方を手にする。
 

超高ストレス社会で自分を守り抜き、
 軽やかに働くための40の技術が語られた、
「世界一簡単な」人生デザイン学の本。
 

今回は、本著よりChapter38を全文公開! 


 

Chapter 38 できない自分でもいい 


〈Illustrator. Takahiro Koyano

「あの人みたいになりたい」

そういう、憧れの存在を見つけて、そこに近づいていくために努力するのも、成長するひとつの方法かもしれない。しかし、自分とは違う「誰か」を目標にすることには、危険があることも知っておいてほしい。

ひどい赤面症だった、中学・高校時代。

あの頃は、「できない自分」を許せず、ただただ「恥ずかしい。直さなくては」という思いにばかり、とらわれていた。

教室の前で堂々と立ち振る舞うクラスメートや、いつも明るくて楽しくて女の子にモテる友人を、遠くからながめては「うらやましい」と思っていた。

「自分もあんな風になりたい」と願いながら、彼らと比べては、自分との差に愕然としてしまい、どんどん自分を嫌いになっていた。

それで、さらに自分に自信をなくし、人と話すことがより苦手になるという、アリ地獄のような負のスパイラルに陥ってしまっていたのだ。

自分に厳しすぎると、常に「できない自分」「ダメな自分」だけと向き合うことになる。そんな自分に嫌気がさして、「こうしてはいけない」「こうしないといけない」と、自分を縛りつけるようになる。これはあなたの存在自体を否定する行為であり、それが続くと、自分で自分を壊してしまうことになるのだ。

まさにこれは、自分自身を「オーバープロデュース」している状態。

プロデューサーが、アーティストのいいところではなく、弱点や苦手、ダメなところばかり言及し続けていると、次第に、言われる側の「アーティスト性」の輝きが消えてしまう。こういう行為を、オーバープロデュースという。
たとえば、こういうブランディング戦略がよくある。

本人らしさは尊重せず、新人に、有名シンガーのマネをさせ、既存のヒットソングに似た曲を歌わせ、流行ファッションを着せる。どこにもある典型的な、二番煎じ戦略。専門用語でいうと「マーケットイン(市場ニーズに合わせた商品開発)」のひとつ。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

一時的に売れても、社会変化が速い現代では、流行も、市場傾向もすぐ変わる。それを追い続けることは不可能で、いつかそのアーティストは破綻する。

オーバープロデュースが引き起こす、最大の罪だ。

これは音楽業界に限らず、家庭や学校、そして会社でも日々起きていることだ。

子にとって親、生徒にとって先生、部下にとって上司が「プロデューサー」。そんな彼らがもっともやってはいけないのが、誰かと比べてアーティストを否定する行為。

プロデューサーが育て、世の中に送り出すべきアーティストたちを、彼ら自らが日々、言葉で殺しているのが日本の現状だ。

「アーティスト殺人行為=オーバープロデュース」

ぼくがこう呼ぶ、この悲劇を、ひとつでもなくしたいと思い活動している。

もし、身に覚えのある人がいたら、今日からその行いを改めていただきたい。

ぼくは、アーティストに「なにもしない」ことが究極のプロデュースだと考えている。これはあくまで、概念上のブランディング哲学であり、「究極」なだけであって「なにもしない」ことが実際に起きる訳ではない。

料理にたとえるとわかりやすい。

新鮮なオーガニック野菜を、化学調味料で過剰に味付けし、素材の味がわからなくなるくらい煮込むのはもったない。塩とオリーブオイルだけ軽くかけて、そのままサラダで食べた方が美味しいし、飽きずに食べ続けられる。

最初から「その人が好きな音楽」と「個性がひきたつビジュアル戦略」、つまりその人らしさで勝負をしていたら、世の中がどうなろうと関係ない。
これは「プロダクトアウト(商品ありきの手法)」と呼ばれるもの。

高度成長期後の、市場が成熟した日本では、長い間、マーケットインが最良とされてきた。だが、ぼくは過去一度も、その手法をとったことがなく、そもそもプロダクトアウト発想しかなかった。

先輩が始めた、マーケットインのプロジェクトに関わったことがあるが、現場にはつねに無理が生じていて、結局は長続きしなかった。

ブランディングにおいて、もっとも考えなければいけないのは、

「どうすれば、その人の魅力を最大限に引き出すことができるか」。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

市場を分析して、その結果に合わせたり、見つけ出した空席にむりやり座らせるのではなく、そのアーティストの「唯一無二の個性=オリジナリティ」を見つけ出して、それを際立たせ、可能な限りそのまま発信する。

そうやって、競争相手のいない「これまでにない新しい席=新しい市場」を創造すべきなのだ。これこそ文字通りの「マーケティング=市場創造」。ぼくにとっては、強豪だらけの市場に飛び込むより、単純にその方がワクワクするし、楽に思える。

時価総額世界一にもなったアップル社がその代表例。マーケットインを一切やらずに大成功を収め、世界を変えてきた。ちなみに、市場調査を無視し続けてきたアップル社のすべてのヒット製品は、あのスティーブ・ジョブズが「個人的にほしかったモノ」だったとぼくは想像している。

これぞまさに、「誰かひとりに向けてのヒットの法則」の実例だ。

先進国には異常なほどモノにあふれている。無駄なモノづくりのために貴重な地球資源を削り、途上国の人々から搾取を続けている。

「似たようなモノ、余計なモノはもういらない」「二番煎じ的なマーケットインはもうやめて」と強く思うのはぼくだけじゃないだろう。

百歩譲って、ビジネスにおいてのマーケットインはまだいいかもしれない。

でも、あなたの人生においてはあり得ないはずだ。

「こうしたらモテる」「こういう服が流行ってるから買う」

繰り返しになるが、本当のあなたと違うブランドをでっち上げても、決して続かない。

「やりたくもない、好きでもないこと」を続ける行為は「自分自身のオーバープロデュース」であり、あなた本来の輝きを殺す行為。

世の中の動きに振り回されず、あなたがいるべき場所に、しっかり根を下ろす。過度な脚色はせず、シンプルに「自分らしさ」を追求し続ける。

最強のブランディング戦略とは、社会状況とは関係なく、その人らしさ、つまり、オリジナリティを突き詰めていくこと。

あなたらしさを最大限に表現した状態こそが、あなたがもっとも美しい姿なのだ。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

 

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『人生やらなくていいリスト』四角大輔

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