人生やらなくていいリスト
四角大輔著  

頑張らなくていいことに「命=時間」を費やしてるあなたへ。  

「To Do」を手放し、仕事の効率を高める。
「心の荷」を捨て、理想の生き方を手にする。
 

超高ストレス社会で自分を守り抜き、
 軽やかに働くための40の技術が語られた、
「世界一簡単な」人生デザイン学の本。
 

今回は、本著よりChapter5を全文公開! 


 

Chapter 5 言葉にできない衝動を信じていい


幼稚園に入る前に、初めて体験した「魚釣り」。

釣りバリを、陸からは見えない水中に入れたとき、「未知の世界」とつながれた気がした。詳細な記憶は無いが、体が沸騰するほどゾクゾクした感覚だけはハッキリ覚えている。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

初めて自分の手で魚を釣り上げたのは、小学校に入ってすぐ。

故郷、大阪府郊外の田園エリアには、当時はまだ多く川や池があった。

「秘密の場所がある」という友達について自転車を20分走らせた後、草むらを歩いて行くと、小川にたどりついた。ぼくにとってはちょっとした冒険。

エサを水中に入れてしばらく待つ。すると突然、釣り糸を通して手に「ブルブルッ」という振動が伝わってきた。

「何かとつながっている!」という衝撃に襲われ、前進がしびれたような状態に。

釣れたのは、手のひらに乗るくらいの小さなフナ。

だが、その「言葉に出来ない強烈な衝動」は、体の真ん中あたりに宿り続け、その後のぼくの人生をデザインすることになる。

笑わないでほしい、これは本当の話だ。

のちに、レコード会社勤務の激務を縫って、フライフィッシングという、独特な釣りのセミプロとなり、この釣りを究めるために、世界一その釣りができる国、ニュージーランドの湖(釣り場)に暮らしているのだから。

あなたにも、幼少期にこういった経験はないだろうか。

ぼくの場合は、たまたま釣りだったが、その対象は人それぞれなはず。あなたにも「人生を変えるほどの衝動」が、体のどこかに残っているはずだ。

多くの場合、それをわすれてしまっていたり、封印してしまっているが、それはいつでも呼び戻すことができるとぼくは信じている。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

以来、放課後すぐに出かけ、真っ暗になるまで釣りをするのが日課となった。

週末や長い休みに入ると、登山部出身で渓流釣りが得意な父親に連れられて、和歌山、長野、岐阜といった自然豊かな地域へ、キャンプや山歩きに行くように。

近所の川や池だけでは飽き足らず、ツーリング用の自転車を買ってもらい、小学校高学年から中学生にかけては、その自転車で1〜2時間ほどかけて、さらに遠くの美しい山上湖へ通うように。高校に入ってからは中古のオフロードバイクを購入し、釣りの行動範囲はさらに広がり、活動はより活性化する。

大学生になり、中学生から書き続けてる「やりたいことリスト」にずっとあった。「究極の釣りフライフィッシング」と「キャンピングカーの旅」という夢もついに実現。

肉体労働のアルバイトをたくさんして、格安でボロボロのバンを買い、一ヶ月近くかけて自身の手でキャンピングカー仕様に改造。

そこに釣りキャンプ道具一式を積み込んで、関西中部から甲信越を中心に、各地の水際へ、ひとりでフライフィッシングの旅にでかけた。

林道に車を駐め、そこから衣食住を詰め込んだバックパックを背負い、丸1日、時に数日かけて、源流や山上湖を目指して歩くこともあった。

今ではライフワークとなっているフライフィッシング冒険の原型だ。

初めての北海道。横断するように、20日間ほどのキャンプとリップをした時、再び「言葉にできない衝動」を味わうことになる。

屈斜路湖の畔に数日間テントを張って過ごすある朝、夜明け直後に霧が晴れて、鏡のように静寂な湖面が姿を現した瞬間、胸がざわめいた。

幼少期から、さまざまな水際で釣りをしてきたぼくにとって、「湖が断然好き」ということに気付いたのは、まさにその時。

同時に、人生でいちばん気持ちいいのは、「湖でフライフィッシングをしている時」であることも知ってしまったのである。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

ほとんどがひとり旅だから、話し相手は大自然と、自分自身。人間嫌いだった当時のぼくにとって、自然への単独行は、社会からの逃避でもあった。

だが、この「孤独な時間」は、今ではかけがえのない宝物となっている。

年100日以上という、フィッシングトリップを続けるうち、「邪念や我欲」といったノイズが頭から消え、自分の心としっかりつながれるようになった。

ぼくの場合はたまたまフライフィッシングや登山といった大自然への冒険、そしてひとり旅という形だったけれど、ランニングでも、ヨガでも、瞑想でも、茶道でも、方法はなんでもいい。

自身の心の奥にアクセスし、自分自身と向き合える「孤独な時間」、この時間を「アーティストタイム」と呼び、今でも大切にしている。

この、自分の内側とつながる感覚を手にすると、「無理していること」や「心に嘘をついていること」が明確に見えてくる。

そうすると、あなたが本当に「やりたかったこと」や「好きなこと」を思い出せるようになるのだ。

その結果、本来のあなた自身と、自分の人生を取り戻せるようになる。

孤独を恐れるな。それはアーティストタイムという、とても尊い時間だから。 

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『人生やらなくていいリスト』四角大輔

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