人生やらなくていいリスト
四角大輔著  

頑張らなくていいことに「命=時間」を費やしてるあなたへ。  

「To Do」を手放し、仕事の効率を高める。
「心の荷」を捨て、理想の生き方を手にする。
 

超高ストレス社会で自分を守り抜き、
 軽やかに働くための40の技術が語られた、
「世界一簡単な」人生デザイン学の本。
 

今回は、本著よりChapter28を全文公開! 


 

Chapter 28 すぐにできなくてもいい 


ぼくは幼い頃、弟に対して、大きなコンプレックスをもっていた。

なぜなら、彼は、とんでもない優しさと思いやりを持っていたからだ。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

「クリスマスプレゼントに何がほしい?」親にそう聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか。ぼくは迷わず、自分の欲しいものを言う。ほとんどの人がきっとそう。

しかし、弟は、自分ではなく、兄であるぼくがほしがっていたオモチャの名前を口にするのだ。彼がまだ幼稚園児だった頃から、だ。

子どもながらに、「なんていいヤツなんだ」と感動していた。

そんな弟と自分を比べては、「常に自分のことを優先してしまうぼくは、なんと身勝手なんだ。もっと優しくなりたい」と、本気で悩んでいた。それなのにぼくは、ひがみからか、つい彼に、いじわるをしてしまっていた。

やってしまった瞬間に毎回「あっ」と後悔するが、先に口や手が動いてしまう。そして夜、布団の中で眼を閉じた瞬間、大きな罪悪感に襲われる。彼の悲しそうな顔とともに、そのシーンが何度も、頭のなかによみがえってくるのだ。

そして、寝る前の「ひとり反省会」が始まる。

「またひどいことをしてしまった、自分はなんてダメなんだ」と、自分の行動をひとつずつ振りかえり、自分を責めるのだ。

「二度としません。ごめんなさいごめんなさい」と、心の中で呪文のように唱える。

「明日こそ弟に優しくなれますように、弟のようになれますように......」と、祈るような気持ちで、毎日眠りについた。

だが次の朝起きてもぼくは同じまま。いじわるをしては夜反省、という日が続いた。

「自分はずっとこのままなのだろうか......」と思いながら、何年も何年も反省を繰り返したある日。行動する前に、初めて思いとどまることができたのである。

それでも、最初から完璧にできた訳ではない。

徐々に、「自分が願い続けた」態度や言葉を出せる割合が増えていった。そして、いつの間にか、弟に対して、心から納得できる行動ができるようになったのだ。

奇跡は起きたのだ。

そんな弟とは、いまではお互いを名前で呼び合う親友であり、仕事でも刺激を与え合う同志のような、最高の関係になっている。

「寝る前のひとり反省会」を続けたのは、幼稚園に入る前から小学校を卒業するまで。だから、10年はかかったことになる。

1年は365日だから、10年で3000回以上という、気が遠くなるような回数の反省会を経て、ようやく願い通り、理想の自分になれた訳だ。

「3000回やれば奇跡は起こせる」
「10年かければなんでもできる」

少年期にこの学びを得られたことは、人生の財産となった。

そのおかげで、すぐに結果が出なくてもあきらめず、「理想のイメージ」を願い続け、そこに向かって「小さな努力」をコツコツと重ねられる、シンプルな生き方ができるようになったのだ。

「考え方はすぐに変えられるが、性格は変えられない」とよく言われる。

だが、もしあなたが「人として善い方向への変化」を心から願い、そこに向かって努力し続けることができれば、必ずできると、ぼくは断言できる。

人間は、母親の胎内にいる時は誰もが「美しい心」をもっていた。この過酷な世界に生まれた後、厳しい環境によってそれを封印したり、忘れてしまうだけなのだ。

だからぼくは、こういう言葉を使いたい。

「変わる」ではなく、「本来の自分に還る」んだ、と。

あれ以来ずっと、「親」「友達」「パートナー」「同僚」「後輩」「態度が悪かった店員さん」といった人たちに対しての、自分のよくなかった言動を正せるように願い、毎晩の反省会を続けてきた。

そうやっていまでも、自分自身から逃げず、自分自身と真摯に向き合い、「本来の自分」を取り戻す努力を続けている。

これは、おそらく人生で唯一、胸を張って、自分を責められる行いかもしれない。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

「人は1年でやれることを過大評価するが、10年でやれることを過小評価しすぎる」

友人が、ぼくの信念と同じような言葉を教えてくれた。

これは、経営の神様と呼ばれるあのピーター・ドラッガーの名言だ。

ニュージーランド移住の夢を果たすのにかかった年月は、15年。

長い年月だったが、いまぼくは、心から幸せだと思える、自分らしい人生を送ることができている。

『人は走れる距離を過大評価するが、歩いてたどり着ける距離を過小評価しすぎる』とは、ぼくの言葉だ。

「小さな努力を重ねることで起こせる奇跡、得られる感動を。ひとりでも多くの人に味わってほしい」

そう祈りながら、今日も眠りにつきたいと思う。 

***** 




『人生やらなくていいリスト』四角大輔

▽Amazon【講談社+α文庫/¥858】Kindle版もあり
http://amzn.to/2GQL962

▽本書特設Instagramアカウント:@undolists
https://www.instagram.com/undolists/