『人生やらなくていいリスト』
四角大輔著
頑張らなくていいことに「命=時間」を費やしてるあなたへ。
現代社会を生き抜くためのミニマム仕事術。
「To Do」を手放し、仕事の効率を高める。
「心の荷」を捨て、理想の生き方を手にする。
超高ストレス社会で自分を守り抜き、
軽やかに働くための40の技術が語られた、
「世界一簡単な」人生デザイン学の本。
今回は、本著よりChapter23を全文公開!
Chapter 23 あたり前のことができればいい
〈Illustrator. Takahiro Koyano〉
ぼくは、ふたつの大学で非常勤講師をし、多数の大学で講義をやってきたこともあり、全国に多くの教え子たちがいる。
そんな彼らが社会に出て、壁にぶつかった時必ず伝える言葉がある。
「あたり前のことができればいい」。
どんな仕事でも、基本的な業務は2〜3年あれば覚えられる。
しかし、「本当に大切なこと」を理解せず、それができないままどんなに働き続けても、 どの業界にいってもうまくいくことはない。
逆に、「本当に大切なこと」がしっかりできれば、どこにいっても大丈夫。
これは、社会に出てから20年以上経ち、仕事柄、さまざまな職種の人たちと仕事をし、おそらく一万人近い人と会って確信できたことだ。
では、「本当に大切なこと」とは何か?
それを教わったのは、就職して3年目。
ソニーミュージック札幌営業所から転勤で東京の本社勤務となり、メディア宣伝とアシスタントプロデューサーを兼任することになった時のこと。
のどかな地方の営業職から、ビジネス激戦地、東京都心部での難しい仕事に就き、寝る間もないほどの激務に突入。
どうすればいいかまったくわからず、気が遠くなるほど戸惑っていた。
本社のスタッフは、仕事も、歩くのもすごく速い。
会議でも早口でがんがんプレゼンし、いつも自信ありげに堂々としていた。
そこにいるだけで、どんどん自分がダメな人間に思えてきたのだ。
ある日、自分のデスクで大きくため息をついていたら、心配に思ったのか、直属の上司から「大丈夫か」と声をかけられた。
「地方営業としても低評価だった自分が、東京でいきなりプロデュースだ、メディア宣伝だと言われ、途方に暮れてます」と、思わずこぼしてしまった。
すると、その上司は、こう言ってくれた。
「オレたちの仕事は、確かに忙しくて難しい。だからこそ、人としてあたり前のことをきっちりとやっていればそれでいいんだよ」
人としてあたり前のこととは。
約束は守る。ちゃんとお礼を言う。
ていねいな敬語を使う。人に会ったら元気に挨拶をする。
時間に遅れそうになったら、きちんと連絡をする。
〈Illustrator. Takahiro Koyano〉
「この業界はみんな忙しくて、あたり前のことがだんだんできなくなる。それをやっているだけで頭ひとつ抜けることができるから」
そう言われて、重くなっていた心が少し軽くなった。
この言葉は、今でもぼくの座右の銘だ。
これは、学生、社会人に関係なく、どんな業界、どんな仕事であっても忘れてはいけない大事なことであり、社会的信頼を得るための極意だと思う。
誰もが、キャリアを積むほど忙しくなり、あたり前のことができなくなる。
そして、デキるすごい人とは、仕事を始めた頃に一生懸命にやっていた「あたり前のこと」を、ずっと続けられる人のことをいうのだ。
「四角さんがプロデューサーとして成功を収めたり、ベストセラーを出せた理由は何ですか?」と、取材やインタビューでよく聞かれる。
おそらく相手は、何か「ヒットの魔法の方程式」のような答えを期待しているのだろう。
でも、ぼくはいつもこう答えている。
「人としてあたり前のことを、昔から変わらず、愚直にコツコツとやり続けてきただけです」と。
〈Illustrator. Takahiro Koyano〉
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