「なんでまだ広島行ってんねん。て思うよ」
大輔さんは、穏やかな口調で、でもいつもの真っ直ぐ言い切る時の目で、こう言った。

その言葉は、ズバッと、ツーシームのストレートが胸元に来て、「あたる!」と思った瞬間にクイッと曲がってストライクになった感じ。
すがすがしいまでに、ギャフンとなった。

大輔さんが、蒜山の我がホームプレイスに来てくれるなんて、めちゃくちゃ贅沢な経験させてもらったので、
僕は、気持ち控えめにしていた。
遠くからキャンパー達が集まっているので、自分ばかり独り占めも悪いと思って、少しひかえていた。
大輔さんは、もんきちとの時間も大切にしていたし、自分もずっと息子といたので、本当に会話出来たのは、わずかな時間だった。
それでも、リアル大輔さんの言葉は、ズバッと来た!!!

ーーー
話は少しさかのぼって、昼間、皆で蒜山のカフェに集合したとき。
楽しい時間が過ぎて、そろそろ田村家に移動しますか、というだんで、自分がトイレに行った。
トイレから帰ったら、息子が泣きわめいていた。
しまったと思った。。。

ここはキャンプなので、打ち明けます。

実は、私の●●●●は、モイモイというキャラの設定で、息子がベビーの頃からトイレでモイモイと会話する、ということが習慣になっているのです。
モイモイの小さい頃の話、昔やっていた仕事(新幹線だった頃もあるらしい)、いろんな思い出、そんな話を、私、モイモイ、息子、の3人でかわす、というふうになっています。
息子は、それをけっこう楽しみにしていて、自分がトイレ(小)に行くときには、欠かさずついてくるのでした。

それが、その時は、ついうっかり、1人でトイレに行ってしまったのです。

息子の怒りは収まりません。
声の限り叫んでいます。
うるさすぎるので、ひとまず、トイレの個室に2人で入り、なだめました。
エスカレートする一方です。

「おしっこしてーーーーーー!!!!!!」
泣き叫ぶ息子。
「今出たばっかりだから無理だよ。。」
なだめる自分。

きっと、大輔さんも、キャンパーも、お店の人も、聞こえるだろう、おそらく彼の全力の声を息子は叫びます。

人生でもう二度とないかもしれないシチュエーションです。
「おしっこだしてーーーー!!!」
と、絶叫しながら懇願されるなんて。。。

でも自分も日本男児です。

「わかった、父さん、やってみるよ。」

トイレに向かいました。
息子も泣き止みました。

ちょろちょろと出ました。
人間やれば出来る!!!

しかし、

「少ないーーーー。もっと出してーーーーーーー!!!!」
と、再び絶叫。

「いや、人間は、そんなにおしっこでないんだよ。。」
となだめる自分。

トイレから出ようと、カギを開けても絶叫して食い止めてきます。
もうどうにもならない。

「わかった。父さん、もう一度だけやってみる。」

トイレに三度目で向かいます。

ちょろちょろっと出ました。
自分でも驚きでした。
人間とは、ここまでできるものなのか。
3回出したんだから、許してもらえる。
でもそれは、大人の理屈だったのです。

「もっと、いっぱい出してーーーーーー!!!」

「もう無理、限界なんだよ。。。」

そんなこんなで、トイレで30分。

息子も泣き疲れておとなしくなるんじゃないかと思いました。
でも、そんな思いはかないませんでした。
無限の怒りと欲求をぶつけてきます。

思いました。
思えば、2拠点の忙しさにかまけて、広島のパン屋に通う毎日でした。
とくに、9月はスタッフが夏休みで、かなり広島よりだった。
妻も、ちょっと疲れていて、2人の関係もギクシャクしていた。
2人とも、負担かけてしまってたんだな。。

その2人の思いが、息子の怒りとなって、僕に向かってるんだ。
僕は逃げてはダメだ。
今まで逃げていたんだから、せめて、今は受け止めてあげないと。
僕は限界に挑戦することにしました。

深く深呼吸して、精神を集中しました。
その本気さが伝わったのか、抱っこされている息子もじっとモイモイを見つめています。

今までゴメン。
父さんの決意を見て欲しい!

ジョじょーっと、止まるところを知らないほどの、大飛行!
勢い、長さともに申し分のないおしっこでした。
自分でも驚きでした。
息子も驚いていました。
そして息子は目を涙でぬらしながら、笑顔でした。

息子に目で、「トイレの扉をあけるよ」と聞きました。
彼は無言でうなずきました。
やっと開いたトイレの扉。
外には、皆の笑顔がまってくれていました。

つい、ガッツボーズがでました。
頭の中には、映画『アルマゲドン』のテーマソングが流れていました。


ーーー
それをふまえての、
大輔さんの言葉だったので、ズバッと来たのでした。

大輔さんが帰った週、広島帰りませんでした!!
この一週間だけでも、
息子も妻も、穏やかになった気がします。
今までも幾度となく人生のヒントを頂いてきましたが、
今回も本当に、、大輔さんありがとうございます!!!