世界10ヶ国以上を旅して回る日々のあと、我がベースキャンプに帰還(2015年12月当時)。ニュージーランドの原生林に囲まれた湖の畔に建つ自宅のことである。
ここは、ぼくが自給自足ベースの〝森の生活〟を営む重要なホームだ。
ケータイ圏外で水道もきていない、というと世捨て人が住むような場所だと思われるが、電気と電話線は届いている。
それだけあれば、ネットをとおして仕事ができる。
ここは立派な、ぼくの〝クリエイティブオフィス〟なのだ。
〈Model. Daisuke Yosumi in NZ〉
モバイルボヘミアン(生活旅人)であるぼくが、年の半分強という、もっとも長い期間を過ごすこのライフスタイル拠点は、自身の「思考・身体・心」をリデザインし、パフォーマンスを最大限まで引き上げるためのベースキャンプでもある。
ここを訪れたあるアーティストは「究極のリトリート(自分を見つめ直すための施設)」と表した。
実際ここには、世界各地からデザイナーや作家、ミュージシャン、起業家といった〝0から1を生み出すクリエイター〟がやって来る。
友人である彼らは普段、都市空間を拠点にしており、24時間オンライン状態で爆発的な量の情報に触れ、多数の人たちと常に社交している。
それでは、脳と体は疲れ果て、自身の心の在り処を見失ってしまう。
そんな環境から避難するように、皆ぼくのところにやって来るのだ。
うちで食べるものは、庭で育てたオーガニックの野菜と果物、湖や近くの海で自ら釣ってくる野生魚がメイン。
体と脳のパフォーマンスを低下させる、農薬や食品添加物などの化学物質を摂取することはほぼない。
〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ〉
生活用水と飲料水は、美しい湖から湧き水をポンプでくみ上げたもの。
つまり純度100パーセントのミネラルウォーターだ。
森が生み出す空気の酸素濃度は高く、マイナスイオンが充満している。
家にいるだけで、森林浴をしている状態だ。
日の出とともに目覚め、湖で泳いだり釣りをしたり。
ヨガ、湖畔ラン&ウォーク、マウンテンバイク、カヤックもする。
日没とともに活動をやめ、夜はローソクの灯りで過ごし、Wi-Fiルータの電源を切る生活。
日中にしっかり身体を動かすことで、心地よい疲労感が残り、毎晩ぐっすり眠れる。
この暮らしは、どんな夜型人間をも早寝早起きにさせる。
ここにいる間、アトピーなどのアレルギーを持つ人は症状が消え、感情のアップダウンが激しい人は安定する。
不眠症が改善したり、軽度の鬱が完治した仲間もいる。
そして、曲を創れなくなったアーティストや書けなくなった作家などが、スランプから脱出するきっかけになることもあった。
〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ〉
なぜそうなるのか。
答えは簡単。
食とライフスタイルが健全化することで、心身が整うからだ。
その結果、より高いクリエイティビティを手にすることができる。
日本とは季節が逆なので、ニュージーランドは今がちょうど春の終わり(2015年12月当時)。
これから夏が始まり、至福の季節へと突入する。寒すぎず暑すぎず、雨も湿気も少ない天国のような気候だ。
この期間はなるべくこの地を離れたくないので、旅は最小限にし、湖畔で執筆やクリエイティブの表現活動に集中する。
年の半分を〝生活旅人〟としてインプットに費やし、残りの半分を〝森の生活者〟としてアウトプットに特化する。
クリエイティブであり続けるために、自身のパフォーマンスを最大限まで引き上げるために、できる限りこのライフスタイルを続けたいと思う。
2016/06/24 22:00