先週は、転職したり、好きなことを仕事にする前に、「まずは今の仕事でいいパフォーマンスを出すことの大切さ」についてお伝えした。
その最も効果的な方法は「今の仕事を好きになる/楽しむ」こと。
なぜなら、人間を含む哺乳類の脳と体がそういう仕組みになっているから。
先史時代の祖先の「働く」とは、「食べるための狩猟や採集」「家事や子育てといった暮らしの営み」だった。
そして、その「働くこと」すべてを、楽しんでいたと言われている。すべての「働く行為」には〝喜び・楽しさ〟があり、脳内では「報酬系」と呼ばれる〝心地よさ・気持ちよさ〟が刺激される領域が活性化していたという。
「なぜ?」と考えるのは愚問だろう。
「食べるために働くこと」と「暮らしの営み」のすべてが、「食欲や排泄欲」「睡眠欲や性欲」といった「快適に生きるため・種を残すため」に必須の本能的な欲求と同じくらい〝楽しくて気持ちいい〟はずだから。
人類250万年という長大な歴史の中で、これら「脳を喜ばせたい」という根源的な欲求を満たすべく生きる、という生命プログラムがDNAの奥深くにインストールされたのだろう。
自給自足ライフを送り、家事と子育てにフルコミットする——ぼくの個人的な直感として、この考察は正しいと断言できる✌️
ちなみに、現在の野生動物たち——悲しいことに猛スピードで数が激減し、種が絶滅しているが——も当然、同じ原理原則(生命プログラム)に従って生きていることは言うまでもない。
動物のドキュメンタリーで観たことがあるだろう。
動物の子どもたちは、遊びを通して狩りを覚える。うちの庭の湖に暮らす水鳥たちは毎年子を産むが、その子たちが水草を食べる方法を最初に覚えるのは、「大好きな親が楽しそうにやってることを真似したい」と思うから。
ちなみに、人間や動物の脳には「ミラーニューロン」という機能があり——特に赤子や幼児期に活発に働くのだが——親や周りの大人がやってることの「真似をすることが楽しい!」という働きをする。
先の水鳥の子たちが、潜っては水草を加えて浮上している姿を観察していると、キャッキャッと鳴きながら歓喜していることがよくわかる。「食べるため」ではなく「おもしろい!」と思って行っていることは説明不要だろう。
そしてこのことは、我が子モンキチ(今月で生後2年と9ヵ月!)を見ていてもそのことはよくわかる。ぼくの動作を真似しているときに、楽しそうなこと楽しそうなこと(最近では、言葉を必真似てどんどん覚えていく😆)。
しかし、人類は約1万年前に「農耕」を発明した後、定住して農業労働に従事し始める。遂に安定と安心を得たからと思いきや……朝から晩まで、子供から老人までがずっと畑仕事に縛られるようになる。
「食料を確実に確保できる」という安心感を得る代わりに「楽しかった狩猟採集」をやめてしまったのだ。
これが「楽しかった仕事」が「単なる労働=労役」になった最初の一歩。
これは、ぼくがニュージーランドの湖畔の森で「狩猟採集×農業」のハイブリッド自給自足ライフを12年送ってきたぼくはよく理解できる。
魚釣りという狩り、潮干狩りや森での採集は「楽しくて楽しくていまだに100%遊び✌️」だが、畑と果樹園の管理は——もちろんいまだに大好きだが——ときどき「しんどいな」と思うときがあるからだ。
その後、どんどん「働くこと」が喜びに繋がらなくなり、200年前の産業革命を経てからは、「労働・労役」どころか「苦役・苦痛」になってしまった。
ぼくは、人生をかけて「働くことは本来楽しいはずだ」という原点を伝えたいと思い、執筆や表現活動をしてきた。その集大成が『超ミニマル主義』と『超ミニマル・ライフ』であり、ここCampではその想いを7年半にわたり全力で伝えてきた。
さて、話を現代に戻そう。
今の所属先や職場で「好きだと思えること」や「やってみたいこと」を任せてもらえるようになるためにはどんなことが必要だろうか。
1. どの業界や職種でも通用するベーシックスキルを身につけること
2. 仕事に対する考え方、取り組み方をポジティブに変えること
この2つが求められる。
ベーシックスキルとは「基本的なビジネスマナー」「雑務を最速で処理する技術」「効率的なスケジュール&タスク管理」「最低限のコミュニケーション能力」といったもの。
逆の言い方をすると……
「まともなビジネスマナーなし、基本的な業務スキルもなし、しかもネガティブ思考で仕事をしている人」に、大事な仕事を任せたいと思うだろうか?
ぼくだったら目も合わせたくない(笑)
まずやるべきことは、狭い業界や社内でしか通用しない無意味なジョーシキではなく、どこでも通用し、時代にも左右されない「美しきベーシックスキル」を身につけること。
長い歴史をもつ日本人独特の美意識をベースとした、気配りマナーや控えめな礼儀正しさは、世界中で通用するどころか今や賞賛される。
(その昔、アメリカの価値観が世界を席巻していた時代1980〜1990年代は、控えめな日本人の態度は否定されていたが今や違うのだ)
この事実は、高校時代にアメリカに1年留学し、その後常に海外との接点を持ち続け、65ヶ国以上を訪れ、ニュージーランドに長年暮らすぼくが保証する。
特に、欧州とニュージーランドのミレニアル世代とZ世代は、日本人の「静かさ」や「繊細さ」を本気でリスペクトしてくれる。最近では、40〜50代でもそういう人たちが増えている。
「ベーシックスキル」を会得し、実行できて初めて、上司や周りの人、会社、そして社会はあなたを信頼するようになる。
結果、より良い仕事、やりがいのある仕事を任せてくれるようになり、あなた自身をより高いレベルへ引き上げてくれるのだ。
【自分らしい仕事をつかむ「前向きな姿勢と誠意」】
ぼくはレコード会社時代に、音楽ビジネスの基礎の基礎であるレコード店営業を入社から2年間、みっちり丁寧にやった。
次に地道さと粘り強さが求められる宣伝の仕事「メディアプロモーター」を3年ほどやりながら……、〝何でも屋&ウルトラ雑用係〟ともいえる「アシスタントプロデューサー」を務め、「ベーシックスキル」を鍛え抜いた。
このベーシックスキルを身につける期間を別の言葉で表現するならば、ズバリ「見習い期間」。
どこかに勤めながら、どの業界でも通用する「ベーシックスキル」を体得するのは効率的だ。その職場を「お金をいただきながら、座学じゃなく専門スキルを実践できるビジネススクール」と考えよう。
この重要な「見習い期間」を軽視する者、適当に過ごす者は、その後ずっと何十年と苦労することになる。
ただし、ブラック企業だと「見習いだから」といいようにこき使われ、あなたの労働が低賃金で搾取されてしまうので注意すべし。
なお、ぼくの「見習い期間」は入社から5年間続いたが、これは今の時代にはマッチしないと思っている。つまり、長すぎるということ。
昔は「10年は修行すべし」なんて言う人がたくさんいたが、今は間違いなく社会構造が違うし、高速で進化し続けるデジタルテクノロジーがある。