ニュージーランドでの湖とともに生きる、自給自足ベースの森の生活も、はや8年目となる。
生命体として美しく生きるためには〝複数の大きな存在〟と、自分自身を同期させる必要があると、最近わかってきた。 

太陽とのシンクロ。 


〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ〉

湖畔の森に夜明けがやってきた。

東からの黄金の光が、目の前に広がる湖面を、金属的に輝かせる。
その光は徐々に、湖を取り囲む原生林を神々しく照らしはじめる。

ここで営むのは、日の出とともに活動をはじめ、日没とともに活動をやめる、というシンプルな暮らし。
それは、太古から当たり前のように繰り返されてきた、祖先たちの美しい営みのことである。

人工の灯りによって夜が消えたのは、人類史においてはここ最近のこと。

そんな現代人のぼくらの体にも、その「太陽のリズム」がインストールされたままで残っている。
それに逆らうことは、肉体だけでなく、心をも狂わせてしまう。

森の生活では、夜はキャンドルの灯りで就寝までの時間を過ごし、20時すぎにはベッドへ。

これは、肌や内臓をはじめ、全身の細胞を修復してくれる「睡眠時の再生のゴールデンタイム」と呼ばれる、22時から2時までの貴重な4時間を味方につけるためでもある。 

大地とのシンクロ。 


〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ / 形がバラバラの庭の自然農法リンゴ。ぼくには光り輝いて見える〉

起床後の最初の儀式は、湖の湧き水でのうがいと洗顔。

そして、フェアトレード&有機ココナッツオイルを口にふくんでの、オイルプリング。
10分ほどクチュクチュ歯をゆすぐことで、寝ている間に発生した口内雑菌を一掃し、オイルがもつ高濃度の滋養を、舌や歯茎に浸透させる。

そのあと、アーユルヴェーダの教え通り、タンスクレイパーで舌苔を綺麗に落とす。

日本から持ってきた本物の、南部鉄器製の鉄瓶で沸かした、湖水の白湯をゆっくりすすって消化器官を温める。

そうやって目覚めさせた胃袋に浸透させるように、無農薬玄米のとぎ汁にリンゴジュースを加えて発酵させた酵母ジュースを飲み、ロー&オーガニックのマヌカはちみつを口へ。

〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ / この日の朝のスムージーレシピ。庭の有機ビーツ、森から収穫してきた野生のリンゴ、マルシェで買った無農薬オレンジと減農薬ショウガ〉

〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ / 自分で作る100%オーガニックのコールドプレスジュースは宝石だ〉

次は、森で採れた洋梨と庭の自然農法によるリンゴで、酵素満載のコールドプレスジュースを作る。お腹の調子を見ながら、豊富な食物繊維が摂れるスムージーを作るときもある。どちらにせよ、朝のオーガニックドリンクの材料はフルーツをメインがメインだ。

そして、自然農法による玄米で造った甘酒をひとくち。

最後は、フェアトレードの有機コーヒーと有機アーモンドミルクで作るカプチーノで締める。

ぼくは、この行程すべてに3〜4時間かける。
純度の高い、これら「大地からのいただきもの」を、丁寧に少量ずつ、体に溶け込ませてゆく。そんなイメージだ。

そうする理由は2つ。

一つは、肉体への配慮。

朝食は、睡眠という「ファスティング(断食)」明けの、「回復食」に当たる。ゆえに最初に摂取するものは、できる限りノンケミカルでナチュラルなものだけにしたい。
そして、眠っていた内蔵に大きな負担をかけないよう、できる限り消化にいいものを選び、さらにそれを時間をかけて食してゆく。

もう一つは、脳への配慮。

ぼくは、集中力がもっとも高まる午前中を、執筆などのクリエイティブワークに充てる。
もし大量の食事を一度に摂取すると、胃腸に血液が集中してしまう。頭に巡る酸素量が減ることによる、脳のパフォーマンス低下を避けたい、というのもある。

つまり、人間の肉体に組み込まれた、〝創造力のゴールデンタイム〟である、午前中を味方につけることがその最大の目的だ。

〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ / 有機アーモンドミルクのカプチーノを飲みながらテラスで仕事。もっとも好きな時間のひとつ〉 

大気とのシンクロ。 


〈Model. Daisuke Yosumi in NZ / 夜明けと共に行う毎朝恒例のヨガ〉

前述の、ちょうどマヌカハニーを食べた後にテラスに出て、朝陽を浴びながら20分ほどの短いヨガを行う。
その時に意識するのは、鼻での深い呼吸。

朝の神聖な大気を、鼻腔を通してゆっくりと肺の奥まで注入し、末端の毛細細胞まで送り届ける。長い呼吸を心がけながらフロー状態になって身体をゆっくり動かしていると、マインドフルネス状態に入る。

周りの深い森が、酸素豊富で、大量のマイナスイオンとフィトンチッドをふくむ大気を生み出してくれている。
森の生活の一番の喜びは、この高栄養の空気を24時間ずっと全身の細胞に提供し続けられることだ。 

心とのシンクロ。 


〈Model. Daisuke Yosumi in NZ / 泳いでは湖面に浮かび、泳ぐを繰り返すフリースタイルのレイクスイム。夏は毎日1〜2kmほど泳ぐ〉

肉体のパフォーマンスがもっとも高まる、午後の〝運動のゴールデンタイム〟に備え、ランチはかなり多めに、一日のカロリーの3分の2近くを摂る。朝が早いので、ランチタイムは必然的に11時台となる。

今日のメニューは、5日目の酵素玄米を茶碗2杯、有機大豆で造った味噌と庭の無農薬野菜によるお味噌汁、ボウルいっぱいの無農薬レタスサラダ、自分で釣ってさばいた野生ヒラマサの塩麹焼き。

30分弱の短い睡眠、パワーナップを入れた後はガーデニング、そしてこの生活でもっとも大好きなレイクスイムだ。

土と植物と一体化できる畑仕事と、湖とつながれる水泳は、ぼくにとってはトレーニングであり、メディテーション。

シンプルな動作の繰り返しは、思考を止め、無我の境地をもたらす。
結果、体の中心から発せられる〝小さな心の声〟にも、耳を傾けられるようになる。

そうすると、見過ごしていた違和感や、気づかなかった自分のブレを感じ取れるから不思議だ。

「自分の心に嘘はつきたくない。自身の魂を売るような行為はしたくない」
そのたびに、そう決意し直すように努める。

この内省と思索こそが、生命体としての純度を高めることに直結するのだ。

自身の心の真ん中にアクセスできるようになると、自分のイビつさを認め、許せるようになる。
必然的に、周りの人たちの価値を認められるようになり、他の生き物や地球と、より真摯に向き合えるようになるのである。

〈Model. Daisuke Yosumi in NZ / 日課のひとつ、植物と大地と向き合うガーデニング。実はかなりの肉体労働で、筋力が自然に鍛えられる〉 

地球とのシンクロ。 


そして、まだ明るいうち湖水を温めたシャワーを浴びて早くも寝る体制に備える。うちでは飲料水も家庭用水もすべて湖の湧き水だから、ここにいると肌の調子も最高潮となる。

その後すぐ、夕食の準備にとりかかる。

ディナータイムは通常、5時台と早い。睡眠の質を高めるため、就寝する4時間前には食事を済ませておきたいからだ。

夜のメニューはいつも通り軽めに。
我が命の源である庭の野菜が盛り盛り入ったスープと、グリーンスムージー。

大切なのは、よく噛むことを忘れないようにすること。ぼくは毎食、最初の一口は100回噛むようにしている。そうすることで、上質な消化酵素が潤沢に分泌され、消化器官への負担を減らせるからだ。

そして、ニュージーランドのビオワインをグラス半分だけ飲む。アルコールも本来ならば、最良の発酵ドリンクだから、飲みすぎなければ筋肉も内蔵もほぐしてくれるのだ。

これらすべての〝シンクロ作業〟は、「地球のリズムで生きる行為そのもの」と言えるだろう。

食べ物とは、地球にしか創り出せない、もっとも波動の高いエネルギー体、つまり命。この奇跡の構成比で存在する成分や栄養素をぼくは、〝究極のアート〟と呼んでいる。

そのアートを、命を、感謝とともにいただき、地球とシンクロして生きていると、自分自身が生命体として、より純度が高まってゆくのを体感できるようになる。

そうやって、体と心の純度を高めるべく努力し続けることこそが、「生命体として美しく生きる」ことにつながるのではないだろうか。

〈Photo. Shotaro Kato in NZ〉 

月とのシンクロ。 


そうしているうちに、自身が「月」とシンクロするようになってきたのである。

満月の日は、海の満ち引きが大きかったり、風がなかったり、魚が釣れないように、地球は間違いなく月という惑星の影響を受けている。この星に暮らす生命体であるぼくらも、当然、同様なはず。

女性には、月経という美しい営みが月とシンクロして訪れるが、男性にはないとされる。

ところが、ここで長い間、森の生活を送っていると、年に数度だが「満月」の夜にまったく眠れなかったり、「新月」の日に体が重かったり、半月の頃に執筆がはかどったりするといった現象が起きるようになった。

これはある種、〝宇宙とシンクロしている〟ということなのかもしれない。なんと神秘的な体験か。人間は、あの大宇宙ともつながっているということか。

最後に、この森の生活を通して追求している、ライフテーマ「生命体として美しく生きる」の、真の目的をお話したい。

この世に生を受けて以来ずっと、この星が産み出した貴重な「命」を大量に食しながら、地球環境を汚しながら生きてきた。

ぼくは、そんな偉大なる母なる大地と、実の母から授かった自身の肉体を、できる限り美しく健全な状態で保ち続け、最期はちゃんと土に還したいのである。

この感覚は、ある日突然ぼくの中に生まれ、そのまま強い信念としてぼくの中に宿り続けている。
まだ完全に言語化できていないので、このことについては、また改めてここで書きたいと思う。

この星に生きる生物の務めとして、土に還すことのできる肉体をデザインし続けたい。

そんな尊い〝死=地球への肉体返還〟を迎えるために、残りの人生を真剣に生きてゆきたいと思う。

〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ / 自宅テラスから撮影した満月〉