職場や家庭の人間関係、仕事のプレッシャーなどさまざまなストレスが社会問題化している日本は「高ストレス社会」といわれる。
その反動か、森林セラピーやアロマテラピーが注目を集めている。

ニュージーランドの原生林に囲まれた湖畔の自宅で、執筆などのクリエイティブワークをしていると、驚くほど集中力が高まるのがわかる。

「脳がクリアになるだけでなく、体と精神も健康になると感じる」と、友人に話すと、否定はされないが、「森の中は気持ちいいよね」と、あいまいな答えが返ってくる。

いわゆる「森林浴」が気持ちいいという感覚は、誰もが抱く。
ただこれまでは、あくまで体感的なものだという枠を超えることはなかった。

〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ / この写真の真ん中あたりに湖畔の森の我が家がある〉

だが、近年、その効能が科学的に証明されるようになってきた。

「フィトンチッド」と呼ばれる、樹々が発する成分が、体に影響を与えているというのだ。
樹木から採ったアロマオイルにも含まれるこの物質は、リラックス効果があるだけでなく、集中力をも高めるという。
さらには、抵抗力と免疫力を向上させ、血圧の安定に寄与することも確認されている。

このフィトンチッドの例から、もしかしたらエビデンス以上に、ぼくらの〝感じる能力〟や〝感性〟を、もっと信じてもいいと伝えてくれているのではないだろうか。

〈Photo. Daisuke Yosumi in NZ / 家から森の中を抜け、湖に下りる庭の小道〉

「大切なことはね、目に見えないんだよ」とは、『星の王子さま』に出てくる有名なフレーズ。

現代に生きるぼくらは、理論や科学の裏付けがないものは〝存在しないもの〟として処理してしまいがちだが、それでいいのだろうか?

「気持ちいい」「癒やされる」「感動する」といった、胸の奥から湧いてくるような〝感覚〟こそ、人間にとってとても大切なことなのだと信じて、ぼくはこれからも生きていきたい。