昨今、テクノロジーが劇的な進化を遂げている。
それは、ぼくが大好きなデジタルの世界にとどまらず、モノづくりや素材開発においても同様だ。

それによって生まれた革新的な製品によって、ぼくが追求しているミニマルな《ULライフスタイル*=超軽量生活》は、日々アップグレードを続けて来た。

今回は、前号で解説した「手ぶらスタイル」の対局にある〝最大バージョン〟の「バックパック・スタイル」について書いてみたい。

写真下は、ここ5〜6年間のぼくの長距離登山の相棒である、米国のアウトドア・ガレージアブランド、Zpacks社製の「アークブラスト」。容量は約52リットルだ。

ぼくは、このバックパックを、大自然への冒険だけでなく、長旅にも活用している。

色やデザインが斬新でぼくの好みであることに加え、汗をかきづらい背面メッシュ構造や、多数のポケット付きなど機能的にもパーフェクト。
そして驚異的なほど軽く、その重量わずか400g台。
(※同モデルの最新版は55L/595gとなっている)

他社製の、同じような多機能タイプで、同程度の強度の50リットルサイズの平均が1.5〜2kg。
この製品がいかに革命的であるかわかるだろう。

〈Photo. Daisuke Yosumi〉

この驚異的な軽さは「キューベンファイバー」というヨットの帆のために開発された、超軽量で高強度の、最新素材によって実現。

このファブリックが登場した当初は、ほんの一部のマニアックな登山具のみに使われていたが、最近では、多くのアウトドアギアに使われるようになってきた。

また数年後には、これをしのぐような技術によって、また新たな素材が世の中に放たれるのだろう。
そうやって、テクノロジーと人類は進化を続けるのだ。

さて。
ぼくは、これ1つだけで、海外で1〜2ヶ月間という長期間の〝移動生活〟を送ることができる。

しかも、上の写真のように少し短めにロールして、トータルの重量を7〜8kg台に抑えれば、ほぼすべての航空会社の機内に持ち込みが可能となる。
旅で必要な荷物すべてを機内持ち込みできれば、旅において多くの利点を手にすることができるのだ。

例えば、スーツケースなどを預けてしまうと、到着空港での、あの無駄な「荷物の受け取り時間」が発生してしまう。
各地にある、世界旅行のハブになっている巨大な空港だと、最近では、その待ち時間は1時間を超えることも。

どんなトラベラーにとっても、荷物が出てくるのを待たずして、到着後すぐに空港を出られるメリットはとても大きい。

言うまでもなく、旅先では、「出国日」という〆切が必ず強制的にセットされている。
やっと訪れた現地での限られた時間は、1分1秒たりとも大切に使いたい、と思うのはぼくだけじゃないだろう。

〈Model. Daisuke Yosumi〉

そんな、旅におけるもっとも貴重な「資源」である「時間」を有効に使えるだけでなく、荷物を飛行機会社に預けることで起こりうる「荷物の紛失」という、せっかくの旅を一旦中断せざるを得ないほど大きなリスクも回避できる。

もう一点、ぼくがバックパックにこだわる理由がある。
それは「圧倒的な身軽さと、自由度の高さ」だ。

上の写真を見てもらうとわかるが、バックパックを背負っていると、当然両手は自由だ。
もしスーツケースだと、少なくとも片手はふさがるし、引きずらないといけないため、歩行速度は遅くなり、通れる場所も限られ、行動範囲はかなり狭くなる。

仮に、現地着が早朝で、宿のチェックインまでかなりの時間がある時、「さあ、スーツケースをどうするか」という問題が必ず発生する。
そのせいで、その日の活動は一気に制限されるはずだ。

ぼくの場合、旅での全荷物が入ったこのバックパックを背負ったまま、そのまま街に出ることができる。
当然、両手は解放されているからストレスフリー。身軽に、自由自在に動き回ることができる。

険しい登山道を1週間以上歩く時は、いつも15kg以上の荷物を背負っているぼくにとって、7〜8kgという重さはその半分程度。何なら走ることができるくらいの軽さでしかない。

ここでも〝軽さ〟のアドバンテージが発揮されることに。
そう、「軽さは正義」なのである。

そして言うまでも無く、中に入れる衣類やトラベルギア、仕事で使うデバイスやガジェットもすべて、軽くてコンパクトなモノを厳選している。
これらマニアックなアイテムたちの解説は次号以降に譲りたい。
今この瞬間も、テクノロジーは進化を続けている。
その進化をフォローアップすることで、ぼくらのライフスタイルは間違いなくアップグレードすることができる。

人の脳が、変化を恐れる構造となっているのは有名な話。
だが、この素晴らしい時代のうねりを安直に否定するのではなく、受け入れた上で堪能し、生活に取り入れ続けることで、人生をより豊にしたいものだ。