先月のテーマは「お金」。
とても難しいテーマだったかもしれないが、実は、今月のテーマ〈インディペンデンス・デザイン〉の基礎編でもあった。
何度でも言おう。
「ミニマム・ライフコスト」を把握して、「これだけあれば大丈夫」という精神的なセーフティネットを確保できれば、あなたは「お金」から自由になれる。
それは、今の〝危なっかしい資本主義〟から距離を置き、景気後退やインフレといった経済の混乱に巻き込まれない、インディペンデントな生き方に一歩近付くことを意味する。
9.11以降に多発するテロや紛争、リーマンショックや原発事故、最近ではパンデミックを受けて、「当たり前だと思っていたシステムやルールが絶対ではない」という事実が浮き彫りになった。
その結果、人生において「何かに大きく依存しないこと」がいかに重要か、誰もが気付いているはず。
20世紀に猛威をふるった「行き過ぎたマネーシステム」は、「有益な情報」や「アート」を装った「広告」というノイズをフル活用し、人間の脳に〝本来はいらないモノやコト〟を欲しいと思わせた。
さらに今世紀に入り、ネットを通して、「独占欲」や「過度の物質欲」という、生きる上では必要のない強欲を植えつけて、消費と浪費を煽ることで(マーケティング洗脳)資本主義は異常なまでの成長・発展を遂げている。
19世紀から20世紀半ばにかけての「成長・発展」は公害や環境破壊といった負の遺産を残しつつも多くの社会課題を解決してくれた。
しかし、20世紀後半から今日にいたるまでの「成長・発展」が、我々市民にもたらした恩恵はわずか——かたやこの間に、人類の0.1%に満たない人たちは異常な額の富を築いた。
ここまで何度もお伝えしてきたように、必要以上のお金で得られる物質的な豊かさは「真の豊かさ」ではない。
環境破壊や人権侵害(社会的弱者からの搾取)を土台としており、倫理性も持続性もナシ。
物質的に過剰となった先進国よりも途上国の方が幸福度が高い、ある一定の年収(*)を越えると幸福度はまったく上がらなくなるという文献が多数あるのはご存知のとおり。
(* 複数の調査を総合すると年収が400〜900万円)
そして、昔の金とは違い、現代のマネーはあまりにも大きなエネルギーを持つがゆえに、ぼくら個々の人生だけでなく、社会全体、いや地球そのものをも破壊する存在となっている。
実際に、この星の生物の大半を絶滅させ、気候さえも狂わせているのだから。
今月は、そんな暴力的なマネーに支えられている「不透明で不公平、複雑で脆弱な社会システム」について考えていきたい。
現代人は、いつの間にか「資本主義」「グローバル経済」「貨幣制度」といった強大なシステムに依存してしまっている。
前述したように、これらによって文明、テクノロジー、科学は進化したと言えるだろう。だが、「行き過ぎた」ことによって、それは理不尽で危険かつ、暴力的なシステムに変容してしまった。
自分らしい自由な人生をデザインしたいなら、そこから少しでも距離を置く方法(可能ならば脱却する術)を身につけた方がいい。
(ぼくが「システムからの脱却」を目指し、ここニュージーランド湖畔の森で、自然以外の何にも依存しないインディペンデントな自給自足ライフを営んできたのは、実践を通してこのメッセージを伝えるためだ)
「不自然で破壊的なマネーシステム」にどっぷり依存してきたこれまでの生き方から、「人間らしい生き方」「自分と家族の人生」「あなたらしさ(あなたのアーティスト性)」を中心にライフスタイルをデザインし直すべく挑戦を始めてほしい。
そのためには、〝あなたの体とメンタルの健康〟そして〝公正な社会と健全な環境〟を取り戻す必要がある。
これが、今月のテーマ〈Design Independence〉のメインメッセージだ。