『人生やらなくていいリスト』
四角大輔著  

頑張らなくていいことに「命=時間」を費やしてるあなたへ。
現代社会を生き抜くためのミニマム仕事術。  

「To Do」を手放し、仕事の効率を高める。
「心の荷」を捨て、理想の生き方を手にする。
 

超高ストレス社会で自分を守り抜き、
 軽やかに働くための40の技術が語られた、
「世界一簡単な」人生デザイン学の本。
 

今回は、本著よりChapter 01を全文公開! 


 

Ch.01 自分をさらけ出してもいい 


〈Illustrator. Takahiro Koyano

長年苦しみ続けた人間嫌いが直ってきたのは、30代半ばくらい。

20年以上にわたり、プロデューサー、友人として、たくさんの音楽アーティストたちと時間をともにした経験から、もし彼らを、ひとことで表現してほしいと問われたら、迷わずこう答える。

「好きなこと、やりたいことを探求し、〝自分らしく生きること〟を追求し続けている挑戦者」

音楽に限らず、映像や写真、絵や言葉といった芸術を通して表現活動をする人は、当然、全員がアーティストということになる。

たとえ芸術に従事していなくても、この世に生を受けて、「自分の人生を生き、人生というキャンバスに、自身の意思で絵を描こうとしている人」は、職業、性別、年齢、人種に関係なく「誰もがアーティスト」なのだ。
つまり、「自分らしさを追求する人はすべてアーティスト」。

これが、この本を通して、ぼくが本気になってあなたに伝えたいことだ。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

ではどうすれば、「自分らしく」生きられるのか?

ありのままの自分を、できる限りさらけ出すことが、その第一歩となる。

「怖い?」「恥ずかしい?」その気持ちはよくわかる。
それができない理由は、ぼくがいちばんよく知っている。

なぜなら、ぼく自身が、幼少期から30代までずっと人間嫌いで、自分をうまく出せず、40代後半のいまでさえ、素の自分を表現するには大きな勇気を要するからだ。

ずっと本当の自分を隠していたぼくが、自分をさらけ出す「小さな勇気」を少しずつ、少しずつ、もてるようになったのは、レコード会社プロデューサー時代に、いつも身近に存在した音楽アーティストたちのおかげなのだ。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

人は「ありのまま」でいる時こそが、他人には「いちばん魅力的に見える」ということを、彼らに教えてもらった。
そして、人は、すべてをさらけ出している瞬間こそが、「もっとも美しい状態」であることに、気付くことができたのだ。

もっと言うと、ぼくらと彼らの最大の差は、才能ではなく、「自分をさらけ出す勇気の大きさ」ということ。
いわば、音楽アーティストの活動それ自体が、ありのままをさらけ出す行為とも言える。

自分に自信がないから、そんなことはできないって?

驚くかもしれないが、ぼくが知る彼ら全員が、自分に自信なんてものはもっていなかった。
だから自信なんてなくていい。

他人に言うには恥ずかしいような、愛する人のことや、大切にしている想いを歌詞にし、メロディに乗せ、歌う。
苦しくて、切なくて、頭では割り切れない複雑な感情を、恥じることなくそのまま表現する。
そして、たくさんの人の前で、文字通り全身で、すべてをさらけ出してパフォーマンスする。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

ちなみに、ぼくがプロデュースしたアーティストは、ロック、R&B、ポップス、フォー ク、ヒップホップ、クラブミュージックと、ジャンルはバラバラ。
でも実は、ぼくなりの「絶対に譲れない共通点」があったのだ。

「その歌声(声質)に、心は、体は震えるか」
いちばん最初に、彼らのデモ音源やライブを聴く時、ぼくがフォーカスするのはこの一点のみ。

歌のうまい下手、音楽性、 歌詞の感性、メロディセンス、外見など、多くのプロデューサー が気にする点は、いつも二の次だった。

これらの要素も重要だが、後でなんとでもなる。

歌い続ければ必ずうまくなるし、最新機材を使えば、ボタンひとつで音程の修正が可能。
曲を書き続ければ作詞・作曲は上達するし、プロのビジュアルチームの力で、「その人らしさ」を追求すれば、容姿も、必ずブラッシュアップできる。

ただ、「歌声」のみは、どうしようもないのだ。
ぼくは、この変えようのない「声」を音楽アーティストにおける「絶対個性」と呼んでいる。

最新テクノロジーの機材を通して、どんなに加工しても、オリジナルの声よりは必ず劣化してしまう。
なにより「歌が伝わらなくなる」のである。

そんなアーティストのむき出しの素の歌声の真髄を体感できる、ライブがもっとも好きだ。
なぜなら、彼らの音楽活動において、ステージ上でのパフォーマンスこそが「もっとも自分をさらけ出す行為」だからだ。

何百人、何千人、時には一万人を超える人の前に歌声一本で立つこと以上に、自分をさらけ出す場面なんて他にはそうないだろう。

観客たちは、そんな彼らの「さらけ出された姿」に感動するのだ。
それを体験したくて、わざわざ人はライブ会場に足を運ぶ。

そしてぼくは、彼らがステージで我を忘れた瞬間に時おり見せる、「音程を外し、バンドの演奏を無視して歌が暴走」というような、完全にさらけ出してしまった姿に、震えるほど感動する。

これは、「リハーサルを繰り返して完成させた型を再現する」という、本来の方針から外れてはいる。
だが、ライブ後のアンケートでは、多くの人がその瞬間のことを絶賛する。
人は、「計算し尽くされたアート」に感銘は受けるが、「計算を超えたアート」に、より心打たれるものなのである。

音楽アーティストとは、すべてをなげうって、大好きな音楽だけに賭けている人たち。
そんな彼らの、子供のように真っ直ぐな「ありのままの姿」に、感動するのだ。

〈Illustrator. Takahiro Koyano

ぼくがずっと好きになれなかったのは、本音を隠しながら接してくる「オトナな人たち」だった。
心許せる友達がなかなかできなかったぼくは、生きる苦しみを周りのせいにしていた。

でも音楽アーティストと接して、そんな自分こそが、ありのままをさらけ出せていなかったことに、ようやく気付けたのだ。

それ以降、音楽アーティストたちと苦楽をともにする時間、彼らのために働く時間が、何よりも充実した時間となった。
そして、彼ら以外にも、「自分をさらけ出す勇気をもって生きているオトナ」が、ちゃんと存在していたことに気付けるようになった。

人前でうまく話せない、顔が赤くなることをからかわれる、チック症をバカにされる、 いじめられる。ぼく自身、学校や会社で、常に居心地の悪さを感じていた。

レコード会社で、一見華やかな仕事をしながら(実際は八割が地味な業務だが)、人と対面する時には、心のなかではいつも極度の緊張と小さな恐怖と戦っていた。

しかし、音楽アーティストたちと過ごした長い年月のおかげで、「自分らしく、ありのままでいい」という人生の真髄を、理解できるようになったのだ。

あなたにとっての「絶対個性」とは何か。
それを見つけ出していただくために、ぼくはこの本を書いた。 

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『人生やらなくていいリスト』四角大輔

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